正マグマ性鉱床(読み)せいまぐませいこうしょう(その他表記)orthomagmatic deposit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「正マグマ性鉱床」の意味・わかりやすい解説

正マグマ性鉱床
せいまぐませいこうしょう
orthomagmatic deposit

火成鉱床の一種で、マグマから有用な鉱物が直接晶出、濃集して形成される鉱床正マグマ鉱床マグマ鉱床マグマ分化鉱床ともいう。通常のマグマ(ケイ酸塩の溶融体)からも形成されるが、特殊な組成をもつマグマから形成される鉱床に重要なものが多い。たとえば、ニッケル白金族元素などの資源となる硫化物鉱床は硫化物を主とする溶融体が、希土類元素などの鉱床であるカーボナタイトは炭酸塩を主とする溶融体が、また磁鉄鉱、赤鉄鉱、燐灰(りんかい)石などよりなるある種の鉄鉱床は酸化物を主とする溶融体が、それぞれ固結したものである。これらの特殊なマグマは、通常のマグマとは混じり合わない性質をもつ(不混和現象)ため、通常のマグマから分離、濃集すると考えられている。

 カナダのサドベリー地方には、硫化物を主とするマグマを伴った斑糲(はんれい)岩質マグマが、長径約60キロメートル、短径約25キロメートルの楕円(だえん)リング状に貫入し、世界最大のニッケル鉱産地となっている。また南アフリカ共和国のプレトリア地方には、ブッシュフェルトBushveldとよばれる巨大な複合火成岩体の貫入があり、これに伴っている硫化物鉱床は白金族元素の供給源として著名である。しかし、研究の進展に伴い、この白金族元素を濃集している硫化物鉱床は、マグマ(溶融状態)から直接固結したものではなく、熱水により運搬・移動してきた硫化物であるとの説が有力である。

 一方、通常のマグマからは珪(けい)酸塩鉱物とともに、少量のチタン鉄鉱、磁鉄鉱、クロム鉄鉱などが晶出するが、これらは珪酸塩鉱物比重が異なるなどの理由で濃集し、チタン、鉄、クロムなどの鉱床を形成することがある。

[島崎英彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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