日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロム鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
クロム鉄鉱
くろむてっこう
chromite
クロム(Cr)のもっとも重要な鉱石鉱物の一つ。スピネル族鉱物の一員。磁鉄鉱のクロム置換体に相当する。塩基性岩の長石に乏しい部分や超塩基性岩中に塊状や層状の集合体をなし、大規模な鉱床を形成するほか、これらの岩石に伴われる炭酸塩岩中、特殊な変成スカルンや隕石(いんせき)中に産する。また月表面の月面海玄武岩mare basaltにも含まれる。塩基性岩関係のものは蛇紋石、苦土橄欖(かんらん)石、透輝石などとともに産し、変成スカルン中のものは、石英、透輝石、灰クロムざくろ石などとともに産する(石英と共存しないという従来のいい伝えは誤り)。日本では愛媛県宇摩(うま)郡土居(どい)町(現、四国中央市)の赤石鉱山(閉山)のものの一部がクロム鉄鉱にあたるほか、群馬県高崎市吉井地区でも端成分に近いものがある。命名は、紅鉛鉱中に発見された元素クロムが主成分をなしていることによる。
[加藤 昭 2016年8月19日]