武野紹鷗(読み)たけのじょうおう

改訂新版 世界大百科事典 「武野紹鷗」の意味・わかりやすい解説

武野紹鷗 (たけのじょうおう)
生没年:1502-55(文亀2-弘治1)

室町時代末期の茶人。通称新五郎,名を仲材,号を一閑居士,法名を紹鷗と称す。わび茶の開祖村田珠光の茶風を仰ぎ,茶の湯簡素化,草体化をさらに進め多くの門弟を得て珠光の茶の湯を広めた。その中には,のちにわび茶の大成者とも茶聖ともうたわれた千利休がいる。紹鷗の伝歴は必ずしも明細でないが,若狭の守護大名武田氏の一族で,祖父仲清は応仁の乱に戦死し,父信久は諸国を流浪の果てに泉州堺に住みつき,姓を武野に改めたという。おりからの戦乱で繁盛を極めていた武具用の皮革業を営み,一代にして財をなしたと伝えられる。紹鷗はその富裕な資産を背景に,当代随一の文化人,三条西実隆に近づき,和歌を学び,朝廷に献金して従五位下因幡守に任ぜられたともいう。また60種にのぼる名物道具秘蔵,晩年には京都四条の夷堂のかたわらに茶室大黒庵を開き,松永久秀や京,堺の町衆を招いて茶事を催している。
茶道
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旺文社日本史事典 三訂版 「武野紹鷗」の解説

武野紹鷗
たけのじょうおう

1502〜55
室町末期の茶人
堺の町人で,茶道を村田珠光の弟子藤田宗理・十四屋宗悟・宗陳らに学ぶ。「道具調度の簡素化」を主張し,自在かぎ・つるべ・ぶっかけ茶碗など庶民生活の中に新しい美を求める。草 (そう) の四畳半座敷,三畳・二畳半などの小座敷を創作し,竹の蓋 (ふた) 置など侘 (わ) び茶の道具を考案。侘び茶を弟子の千利休に伝えた。門人には,利休のほかに津田宗及・今井宗久らがいる。

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世界大百科事典(旧版)内の武野紹鷗の言及

【皮∥革】より

…ただし,なめし革を直接生産者から収集し,これを商った皮屋・切革屋も同様であったとみるのは早計であり,今後の研究にまつべき点が多い。ちなみに,千利休や今井宗久・津田宗及らの著名な茶人の師匠であった武野紹鷗(たけのじようおう)も,和泉堺(現,大阪府堺市)の〈皮屋〉の子息であった。 皮革の需要は戦国時代に急速に高まったが,各地の戦国大名は競って熟練工の確保に努め,彼らに特権(職業と販路の独占)を付与することと引替えに,城下町の周縁地域に緊縛して身分・職業・居住地ともに一般民と隔離する政策をとった。…

【茶室】より

…さらに茶屋のもつ自由な構成と意匠は貴族社会において極度に洗練された。 武野紹鷗は茶室の空間的個性を確立することに成功したおそらく最初の人であった。紹鷗の四畳半は〈唐物持,京堺ノ衆,悉(ことごとく)是ヲ写ス〉(《山上宗二記》)と伝えられるほどで,利休好みの四聖坊(ししようぼう)四畳半や松屋久栄の四畳半のように,明らかにその実例と認めうるものが図として伝えられている。…

【茶道】より

…16世紀に入ると,わび茶は当時繁栄を極めた都市堺の町衆達に愛好された。その中心にあったのは代表的町衆の一人武野紹鷗である。紹鷗は皮屋と称する富裕な商人で,唐物名物を50,60種も所持していたといわれるが,その反面,歌学者として著名な三条西実隆について歌道を学ぶなど文芸に親しみ,村田珠光の主張をうけて,中世芸道としての茶道の確立を果たした。…

【南宗寺】より

…わび茶との関係が深く,庭園は古田織部の作と伝えて,泉石の配置の妙で知られ,千利休遺愛の手水鉢もある。また境内には利休のわび茶の師武野紹鷗(たけのじようおう),利休の一門,連歌師の牡丹花肖柏(ぼたんかしようはく)など,錚々たる堺の町衆文化人の墓がある。【藤井 学】。…

【わび(侘)】より

…なんらかの不運にあって零落するとか,失望落胆するとか,あるいはその結果心細くはかなく思っているとかいう意味である。ところが,中世の隠者たちの草庵生活では,それが世俗の名誉や利害を重んじる価値観・秩序観から自由であることを明示するあかしとして高く積極的に評価されるようになり,さらに武野紹鷗(じようおう),千利休らの〈侘数寄(わびずき)〉の茶の根本精神として深化洗練されていった。後の千宗旦著《禅茶録》には〈其不自由なるも,不自由なりとおもふ念を不生(しようぜず),不足(たらざる)も不足の念を起さず,不調(ととのわざる)も不調の念を抱かぬを侘なりと心得べきなり〉と簡潔に示されている。…

※「武野紹鷗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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