比丘貞(読み)ビクサダ

精選版 日本国語大辞典 「比丘貞」の意味・読み・例文・類語

びくさだ【比丘貞】

  1. 狂言。各流。子どもが成人したので、その親(または兄)は名をつけてもらおうとつれだって老尼を訪問する。老尼は辞退するが、たっての頼みに、自分の通称である「お庵」の「庵」の字をとって「あん太郎」とつけ、また同様に、名乗をも自分の「比丘尼」の「比丘」と相手の家の通字の「貞」を合わせて「比丘貞」とつける。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「比丘貞」の意味・わかりやすい解説

比丘貞
びくさだ

狂言の曲名。女狂言。このあたりの者が、ひとり息子が成人したので名をつけてもらおうと、富貴な老尼(シテ)を訪ねる。尼は、代々太郎を添えると聞き、自分の住居を人々がお庵(あん)とよぶのにちなんで「庵太郎(あんだろう)」とつけ、また名乗(なのり)も望まれると、これには貞とつけるというので、自分の通称の比丘尼から「比丘貞」と決めて、祝儀として米や金子(きんす)を贈る。さて酒宴になり、庵太郎が舞ったあと、尼も親子にぜひにと所望され、「鎌倉女郎(じょうろう)」を舞い、人にいうなと恥ずかしがるが、望まれるままにさらに祝言の舞を舞い納めて終わる。老尼の舞が見どころで、高い品格を保ちながら洒脱(しゃだつ)さと老女の色気とを表現するのが至難で、若年では演じられない秘曲とされる。

[小林 責]

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