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比較生産費説 ヒカクセイサンヒセツ

デジタル大辞泉の解説

ひかくせいさんひ‐せつ【比較生産費説】

リカードによって提唱された外国貿易および国際分業に関する基礎理論。一国における各商品の生産費の比を他国のそれと比較し、優位の商品を輸出して劣位の商品を輸入すれば双方が利益を得て国際分業が行われるという説。比較優位説
[補説]労働量1単位で、A国はパン4個か毛布2枚、B国はパン3個か毛布1枚が生産可能とした場合、どちらもA国のほうが効率的だが、B国では毛布1枚を諦めればパン3個が生産できるため、パンの機会費用が少ない。A国が毛布、B国がパンに特化し、貿易を行うほうがよい。

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百科事典マイペディアの解説

比較生産費説【ひかくせいさんひせつ】

国際貿易が行われる原理を説明する学説。D.リカード創唱。各国が生産費の比較的有利な商品を集中的に生産することに国際分業の根拠を求め,これに基づく国際貿易により相互に利益を受けることができるとする。

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大辞林 第三版の解説

ひかくせいさんひせつ【比較生産費説】

各国が他国に比較して生産費の点から有利な商品を生産し、それを相互に交換しあうことが互いの利益を高めることになるとする説。国際分業の利益を論証することによって国際貿易に理論的根拠を与えるもの。リカードが説いた。比較優位説。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

比較生産費説
ひかくせいさんひせつ
theory of comparative costs

なぜ外国貿易が行われるのか、またどのような商品が輸出されどのような商品が輸入されるのかを明らかにする理論。比較優位説theory of comparative advantageともいう。たとえば、労働だけで生産が行われる場合を想定し、A国ではX財とY財を一単位生産するのに必要な労働時間はそれぞれ6時間と4時間、B国ではX財とY財の一単位の生産に必要な労働時間はそれぞれ10時間と5時間であるとしよう。それぞれの国で自由競争が行われているとすれば、X財とY財の価格比(生産費の比)は、A国では6対4、B国では10対5となって、X財をY財と交換しようとするA国の人は、国内で交換するよりもX財をB国に持って行って交換したほうが有利であり、他方、Y財をX財と交換しようとするB国の人も、国内で交換するよりA国に持って行って交換するほうが有利となるから、A国のX財とB国のY財を交換しあう貿易が発生するであろう。その結果A国の生産はX財に集中化(特化)し、B国はY財に特化して、それらを相互に交換する国際分業が行われ、国際分業によってそれぞれの国でより多くの財が入手できるという分業の利益(貿易の利益)が得られる。このように、いずれの財の生産費もB国よりA国で低い場合でも、A国における生産費の比(6対4)とB国における生産費の比(10対5)に差(比較生産費差)があれば、貿易が行われ、貿易はいずれの国にも利益をもたらすというのが、比較生産費説である。この説はD・リカードによって初めて唱えられ、以後国際分業および貿易に関する基礎理論となっている。なお、ヘクシャー‐オリーンの定理は比較生産費説を生産要素の相対価格関係から基礎づけたものである。[志田 明]

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世界大百科事典内の比較生産費説の言及

【経済学および課税の原理】より

…部や編に大別されぬ章のみの構成で,初版(750部)は30章からなり,一見雑然とした感じを与えるが,第1~7章の〈経済学の原理〉編,第8~18章および第22・23・29章の〈課税〉編,そして残りの〈補遺ないし論争〉編,の3部からなるとみなすことができる。リカード理論の骨格をなす第1部では,A.スミスが投下労働論・支配労働論の二元論に放置した価値論を投下労働論で一貫して説明しようとし,またその差額地代論,利潤率低下傾向の問題を中心とする地主・資本家・労働者3階級間の長期的・巨視的分配関係を論じた巨視的動態論,国際貿易における比較生産費説などでも,以後の経済学に大きな影響を与えた。投下労働価値論と関係する不変の価値尺度の問題はリカードの終生の問題であったが,21年の第3版では,その点が修正されるとともに,有名な〈機械について〉という第31章が付加された。…

【経済学説史】より

…土地の概念を広く解して資源,環境を含めて考えるならば,古典派経済学のこの考え方は成長が無限に可能であるとする近代経済学の成長理論よりもはるかに重要な現代的意義をもつものである。 古典派経済学は重商主義の貿易論を批判したが,貿易収支が均衡していても,各国が相対的に生産費の安い財の生産に特化することから貿易利益が得られるという比較生産費説を展開した。また国際間の商品の交換比率は,労働の国際間移動がないために労働価値説では説明できず,各国の相手国の生産物に対する需要,すなわち自国の生産物の供給により決定されるという相互需要説をJ.S.ミルが提唱した。…

【比較優位】より

…そのとき,各商品の内外価格は為替レートを仲立ちにして均等化し,鉄鋼の小麦に対する相対価格は貿易前の自国の5/6と外国の9/8の中間のある値に落ち着くと考えられる。以上の説を比較生産費説という。上記の設例は,鉄鋼と小麦という二つの財だけを取り上げ,それぞれの生産に必要な生産要素として労働だけを考慮した単純なものである。…

【貿易】より

…したがって各国の為替相場がちょうどバランスがとれている場合に,それで比較する意味で,その国が割安に生産できる商品を輸出し,割高の商品を輸入する。このように生産費によって貿易商品と輸出入の方向が決まるというのが,D.リカードの〈比較生産費説〉(〈比較優位〉の項参照)原理である。 そしてそのような型の貿易をすると,お互いに自国で割安にできるものを,自国で割高のものと交換するのだから,輸出国,輸入国両方とも得をする。…

【貿易理論】より

…第1に,各国の風土的条件や生産技術体系の違いである。これは,いわゆる比較生産費説(〈比較優位〉の項参照)で考慮された要因である。第2に,各国の生産要素や天然資源の賦存状況の差異である。…

※「比較生産費説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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