毛越寺境内(読み)もうつうじけいだい

国指定史跡ガイド 「毛越寺境内」の解説

もうつうじけいだい【毛越寺境内】


岩手県西磐井(にしいわい)郡平泉町平泉にある天台宗の寺。指定名称は「毛越寺境内鎮守社跡(つけたりちんじゅしゃあと)」。東は北上高地、西は奥羽山脈に囲まれた北上盆地の南に立地する。850年(嘉祥3)、慈覚大師円仁が創建したと伝え、奥州藤原氏2代基衡(もとひら)、3代秀衡(ひでひら)が再興した。『吾妻鏡』によれば堂塔四十余宇禅房五百余宇があり、当時、中尊寺をも上回る最大級の規模を誇ったという。現在残る浄土庭園は平安時代の様式をそのまま伝え、とくに遣水(やりみず)の遺構は当時の様式を伝える唯一のものとして規模の大きさとともに特筆され、庭園は特別名勝に指定されている。常行堂(じょうぎょうどう)は当時のものではなく、1732年(享保17)に再建された宝形造りの堂宇であるが、毎年1月20日に行われる延年の舞は重要無形民俗文化財となっている。遺跡は現在の毛越寺の境内にあり、土塁・南大門跡・苑池・金堂跡その他の堂跡の保存状態はきわめて良好である。とくに金堂跡は桁行7間、梁間6間の礎石がほぼ完全に残り、平安時代の伽藍(がらん)形式を示すものとして、学術上の価値がきわめて高い。境内地とあわせて、寺の鎮守のために隣接して建立された日吉白山祇園北野をはじめとする祠や飛び地なども鎮守社跡として、1922年(大正11)に国の史跡に、1952年(昭和27)には国の特別史跡に指定された。2011年(平成23)に、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」の一つとして、世界遺産に登録された。JR東北本線平泉駅から徒歩約10分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報