翻訳|water polo
水泳競技の1種目。水中(プール)で二つのチームが相手側ゴールにボールを入れて点数を競い合う球技。ボールを手で扱うことから、「水中のハンドボール」ともいわれる。オリンピックの正式種目となっている。
[黒田克己 2020年4月17日]
元来、イギリスで水面に浮かべた樽(たる)に乗って櫂(かい)でボールを扱う形式で競技が始まったとされており、馬上で行うポロpoloに倣って、英語ではウォーター・ポロwater poloという名称になったといわれている。1870年ごろ現在につながるルールの草案が考えられ始めたが、1876年、イギリスのボーンマス・ローイング・クラブがルールを整備したので、一般にこの年を水球元年としている。その後、ヨーロッパ大陸に急速に普及し、1900年の第2回オリンピック・パリ大会で男子水球が正式種目になった。とくにハンガリーではもともとの国技がハンドボールであったこと、および国内各地に天然温泉が多数あるため、冬季でもプレーできることから、水球も同国の国技となった。
日本では、1910年(明治43)ごろ慶応義塾大学が採用し、その後各大学に広まり急速に発展した。日本チームのオリンピック参加は、1932年(昭和7)のロサンゼルス大会が最初である。
[黒田克己 2020年4月17日]
当初、ヨーロッパを中心に発展し、現在ではアメリカ、オーストラリアなどでも盛んになってきている。国際的な競技会としては、オリンピック、世界選手権、ワールドカップ、ワールドリーグなどの大規模なイベントが開かれているが、男子ではセルビア、モンテネグロ、ハンガリー、クロアチア、イタリア、ギリシア、スペインなどが世界の強豪といえる。加えて2010年代に入ってからオーストラリアおよび日本も力をつけ、ヨーロッパ列強のレベルに近づいている。
女子については男子に遅れること100年で2000年のオリンピック・シドニー大会から正式種目になり、そのほかの競技会も男子と同様、世界選手権、ワールドカップ、ワールドリーグが行われている。女子の強豪国としてはアメリカ、ロシア、オーストラリア、イタリア、ギリシアがあげられ、ヨーロッパに上位国が集中している男子に比べて地域的な分散がみられる。
[黒田克己 2020年4月17日]
最小限、ボール1個と両チームを区別する帽子、ゴールになる幅3メートル、高さ90センチメートルの木枠さえあれば、プールでも川でも海でも遊ぶことができる。公式戦の場合には、両ゴールライン間が男子30メートル、女子25メートル、男女ともに幅19~20メートル、水深2.0メートル以上のプールが競技場となる。2019年のルール改定に伴い、公式戦の場合はサイドラインの外にフライング・サブスティテューションflying substitutionという、サイドライン外での交代を行うための最低1メートル幅のエリアがあることが望ましい。
用具は、ボール、帽子各チーム13(レフリーの認めた、赤色およびボールの色とは対照的な色。ゴールキーパーのみ赤)、ゴール1対(つい)、ショットクロック(30秒計)1対、8分計2個以上、記録用紙、セクレタリー用旗1組(赤白青黄)などが公式戦には必要になる。
[黒田克己 2020年4月17日]
水球は、前述の競技場で各7人(フィールダー6人、ゴールキーパー1人)からなる二つのチームの間で、ボールを相手側ゴールにシュートして得点を争う競技である。各チームには6人の交代要員がおり、総勢13人で1チームが構成される。競技は正味各8分(1ピリオド)ずつ4回行い、第1ピリオドと第2ピリオドの間および第3ピリオドと第4ピリオドの間に2分間ずつの休み時間を置く。チームのサイド交代は第2ピリオドと第3ピリオドの休憩時に行い、その間の休み時間は3分とする。延長戦は行われず、トーナメント戦のように勝敗を決する必要がある試合では4ピリオドの結果同点となった場合にはペナルティーシュート戦を行う。この場合、各チームは5人ずつのシューターを指名する。各チームは競技時間中にタイムアウト(1分間)を2回請求できる。
ルール上禁止されている基本的なものとして、ゴールキーパー以外は片手でボールを扱わなければならない、ゴールキーパーは自陣6メートルライン内で両手を使うこと、握りこぶしでボールを打つことが許されている、などがある。
反則にはオーディナリーファウル、エクスクルージョンファウル、ペナルティーファウルがある。
(1)オーディナリーファウル 比較的軽い反則で、相手方にフリースローが与えられる。相手の自由な動作を妨げること、両手で同時にボールに触れること、プールの底に立ってプレーすること、各ピリオド開始時のフライングスタート、ボール・アンダー・ザ・ウォーターball under the water(タックルされたとき、ボールを水中に沈めること)、プッシュオフ(タックルしようとする相手を押すこと)などがある。またシュートすることなしにボールを30秒以上保有することはできない。コーナースローやシュートをした後に、攻撃側チームが再度ボールを保持した場合は、攻撃側チームに新たに20秒のボール保有時間が与えられる。
(2)エクスクルージョンファウル 違反者は退水となり、相手方にフリースローが与えられる。ボールを持っていない相手を、押さえ、沈め、引き戻し、あるいはける動作をすること、相手に与えられたフリースローに対する妨害などがある。これらの違反者は20秒間の退水を命じられる。レフリーに対する不服従や試合をおとしめるような不行跡行為に対しては、交代競技者ありの残り試合時間中退水が命じられる。また、乱暴なプレーや、悪意をもって相手を殴る、ける、あるいは殴ろう、けろうとする行為をブルタリティ行為(暴力行為)といい、相手またはオフィシャル(レフリーを含む競技役員や、相手チームを含むベンチ役員など)に対してこれを行った場合、競技中であれば、違反者は残り試合時間中退水となり、相手方にペナルティースローが与えられる。プレー中断中、タイムアウト中などであれば、違反者は残り試合時間中退水となるが、ペナルティースローは与えられない。この場合、交代競技者はこの反則があった4分後に入水が可能となる。また、ブルタリティ行為を犯した競技者に対しては次の試合以降で最低1試合の出場停止処分が科される。
(3)ペナルティーファウル 相手方に5メートルライン上任意の地点からペナルティースローが与えられる反則。守備側が自陣6メートルライン内で、それがなければおそらく得点となると思われる反則を犯した場合に防御側にペナルティーファウルが判定され、攻撃側にペナルティースローが与えられる。この反則には防御側がゴールを動かしたり沈めたりする行為、6メートルライン内の位置で両手でシュートやパスのブロックを試みる、防御側の新たなボール保持が確定していない段階で相手がタックルしてボールを奪おうとしたときボールを水中に沈める、なども含まれる。防御側が6メートルライン内で、相手を殴ったり、けったりするブルタリティ行為を犯すなどした場合には、ペナルティースローに加え、反則を犯した競技者は残り試合時間中退水となる。
なお、前記エクスクルージョンファウルあるいはペナルティーファウルを犯した競技者にはパーソナルファウルが記録される。三つめのパーソナルファウルを科せられると、残り試合時間中退水となる。
また、ボールをサイドラインの外に出したときには相手方のフリースローとなり、ゴールラインの外に出したときは、攻撃側のシュートを防御側がブロックした場合は守備側のゴールスロー、守備側のゴールキーパーが出した場合、あるいは防御側がパスをゴールラインの外に出した場合は攻撃側のコーナースローになる。
審判は2名で行われ、競技について絶対的権限をもっている。この2名の審判員(レフリー)のほか、2名のゴールジャッジがゴールラインの延長上にいる。
このほか競技役員として、正味競技時間と休憩時間、各チームのボールの継続保有の時間を計るタイムキーパー2~3名、競技者の退水時間を管理し、パーソナルファウルを記録・管理し、それを通知する任務をもつセクレタリーが2名いる。加えて公式試合には試合統括者(デレゲート)と審判審査員およびビデオアシスタントレフリー各1名が配置される。
[黒田克己 2020年4月17日]
『公益財団法人日本水泳連盟編・刊『水球競技ハンドブック』』
水上競技の一種。ウォーターポロwater poloの訳。水上競技が泳ぐだけなのは単調だから,球技を織り交ぜた競技をしようという発想から,1869年イギリスで水中フットボールfootball in the waterが行われ,76年にはブルーネマウス競漕クラブが初めて試合を行った。初期には地域によってルールはさまざまであったが,スコットランドのウィルソンWilliam Wilsonが定めたルールが一般に広がり,後の国際ルールの基礎となった。85年にイギリス水泳協会は水球を水泳競技の一分野として公認し,本格的な競技規則が制定された。90年にアメリカに伝えられ,以後ドイツ,オーストリアをはじめとしてヨーロッパ各国へも広まっていった。
オリンピックには1900年の第2回パリ大会から正式種目となり,水球発祥国のイギリスが優勝した。イギリスは,次のセント・ルイス大会ではアメリカに敗れたものの,第6回のアントワープ大会まで5度のオリンピックで4回金メダルを獲得し,水球王国を誇った。その後はハンガリーが強国となり,東ヨーロッパ諸国の間で盛んとなった。
日本では,1907年に第一高等学校で水球の練習をしたという記録が最も古い。その後慶応義塾大学水泳部が水球を始め,横浜,神戸の外人チームと試合を行った。関西でも浜寺水練学校などが,神戸の外人チームを相手に競技会を開催している。25年日本水泳連盟が競技規則を定め,第2回明治神宮競技大会の正式種目となった。30年に名称が〈水球〉と改められ,32年には第10回のオリンピック・ロサンゼルス大会に初めて参加した。第2次世界大戦後は一時期,慶大,日大,早大などが,その後は日体大が日本選手権を獲得しており,大学チームを中心に行われている。
競技場は,図のように30m×20mが正式の規格で,水深はいかなる場所でも2.0m以上でなければならない。女子の場合は最大限25m×20mである。ゴールポストの間隔は3m,クロスバーは水面上0.9mに設置される。ボールは円形をし,円周0.68~0.71m,重さ400~450gである。チームは7名(うち1人はゴールキーパー)の競技者と6名までの交代者で構成され,一方が白色,他方が赤色,あるいはボールの色以外で審判が認めた色の帽子をかぶった2チームにより競技が行われる。競技時間は1ピリオドにつき正味8分,4ピリオド行い,第2ピリオドと第3ピリオド間のインターバルで両チームのサイドを交換し,第1,第3ピリオド終了後は2分,第2ピリオド終了後のハーフタイムには5分の休止が与えられる。各ピリオドの開始時には,各競技者は自陣のゴールラインにそれぞれ1mの間隔をとって位置し,レフェリーがボールを競技場の中央に投ずることにより競技が始まる。ボールが競技者2人以上の手に渡った後に相手方のゴールにボールを入れれば攻撃側の得点として記録される。ボール操作は,ゴールキーパーだけが両手を使用でき,他は片手のみである。攻撃側の競技者が最後に触れたボールが,両ゴールポスト間の部分を除いたゴールラインを完全に横切ったときは,防御側ゴールキーパーにゴールスローが与えられる。ただし,ボールに最後に触れた競技者が防御側である場合には,ボールが横切った側の2m標識から攻撃側のチームの競技者にコーナースローが与えられる。
反則にはオーディナリーファウル(ゴールポストにしがみつく,タックルされてもなお水中でボールを保持する,こぶしでボールを打つなどの軽い反則)とパーソナルファウル(相手をなぐる,ボールをもたない相手を沈めたり捕らえたりする,レフェリーに不服従などの重い反則)とがある。前者の場合は反則の起こった位置からフリースローが与えられ,後者の場合は,反則者は20秒間あるいは得点が入るまでの間退水となり,相手方にフリースローが与えられる。とくに相手方ゴールラインから5mのペナルティライン内において,ボールをもたない相手を沈めたり,けったり,なぐったりした場合,ペナルティスローが与えられ,ペナルティラインよりゴールキーパーと1対1でシュートする。双方が同時に反則した場合などは,ニュートラルスローといい,レフェリーがボールを投げ両チームそれぞれ1名の選手にせり合わせて競技を再開する。
執筆者:石井 宏
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(吉田章 筑波大学教授 / 2007年)
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…サッカーやラグビーやアメリカン・フットボールなどのフットボール系統の競技や,ホッケーやアイスホッケーといったスティックを使う球技,それに水球などで,相手ゴール方向への行動を制約している規定。一般的にボール(アイスホッケーではパック)を支配保持していないプレーヤーが対象で,ボールよりも前方の,ルールに定められた侵入禁止地域やプレー禁止地域に位置すること,およびその地点でプレーする反則をいう。…
※「水球」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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