水路書誌(読み)すいろしょし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水路書誌」の意味・わかりやすい解説

水路書誌
すいろしょし

海上保安庁海洋情報部(旧水路部)刊行物中、海図以外のものを総称して水路書誌といい、水路誌と特殊書誌に分けられる。

[川本文彦]

水路誌

海図と併用して、初めての航海者にも航海、保安上の予備知識を与えるとともに、直接航海の手引とすることを目的として編纂(へんさん)された水路の指導案内記である。総記、航路記、沿岸記、港湾記に区分して、海上における気象、海象、航路の状況、沿岸の地形、港湾の状況、施設等を詳細に記載している。

[川本文彦]

特殊書誌

航海に必要または参考になる書誌で、次のようなものがある。

(1)航路誌 航路選定上の参考資料として編集されたもので、大洋航路誌と近海航路誌との二つがある。主要航路上の障害物、気象、海象の一般概況とともに、具体的に標準航路をも示している。

(2)灯台表 灯台に限らず、すべての航路標識に関する事項を収録している。

(3)距離表 標準的航路を採用した場合の主要各港間の距離を収録している。

(4)潮汐(ちょうせき)表 主要港湾における潮時、潮高およびおもな水道、海峡等における転流時、流向、最強流速等を記載している。

(5)ロラン・テーブル ロラン(ロラン航法)により船位を求めるための表。

 その他、天文航法に必要な書誌として毎年刊行されるものに、天体位置に関する諸要素を暦の形式で記載した天測暦、天測略暦、天体位置表があるが、このうち天体位置表は平成22年(2010)版で刊行終了した。天測計算に必要な諸表としては天測計算表、簡易天測表等がある。

[川本文彦]

『沓名景義・坂戸直輝著『新訂 海図の知識』改訂版(1996・成山堂書店)』『日本水路協会編・刊『水路書誌の電子化に関する調査研究』(1996)』『海上保安庁編・刊『水路図誌目録 航空図を含む』各年版』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の水路書誌の言及

【水路情報】より

…船舶が安全な航海を行うために必要な水路に関する情報。海図,水路書誌,水路通報および海象,気象情報などをいう。海図は航海をするのに必要な沿岸の地物や水路の状況などを示したもの,水路書誌は,海図では表しきれない水路に関する細かい情報や,航路標識に関する情報,天測航法用の天測暦,潮汐表などを書籍の様式にまとめたものである。…

※「水路書誌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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