水銀化合物(読み)スイギンカゴウブツ

化学辞典 第2版 「水銀化合物」の解説

水銀化合物
スイギンカゴウブツ
mercury compound

同族の亜鉛,カドミウムとは異なって,安定な一価および二価の化合物が知られている.一価の化合物は容易に二価に酸化され,二価のものは一価に還元することができる.【水銀(Ⅰ)化合物:Hg2X2(Xは-1価の陰性基)で示される化合物.第一水銀化合物ともよばれる.X線,ラマンスペクトル,磁気的測定により化合物中でHg22+の形で存在し,Hg はないことが確認されている.多くは白色の化合物である.不溶性水銀(Ⅰ)の化合物は不安定で,Hgと Hg化合物になりやすい.【】水銀(Ⅱ)化合物:HgX2で示される.多くは一価化合物と同じように白色である.酸化物,水酸化物,硫酸塩,多くのハロゲン化物が知られている.塩化水銀は水溶液中で主としてHgCl2として存在し,一部 [HgCl4]2- としても存在する.ヨウ化水銀カリウム錯体K2[HgI4]はネスラー試薬として有名である.硫酸水銀(Ⅱ)はタンパク質と亜硝酸ナトリウムで処理すると赤色錯体をつくる.タンパク質検出のミロン呈色試験はこれによっている.

水銀化合物(アミノ塩化第二水銀,塩化第一水銀,オレイン酸水銀,酸化水銀5% 以下,ヨウ化第一水銀,雷酸第二水銀,硫化第二水銀を除く)は毒物指定.水銀および水銀化合物としてPRTR法・第一種化学物質指定.経口吸入,作業環境すべてクラス1で危険性が高い.水道法水道水質基準 水銀として0.0005 mg L-1 以下.水質汚濁法排水基準 水銀として0.005 mg L-1 以下.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水銀化合物」の意味・わかりやすい解説

水銀化合物
すいぎんかごうぶつ
mercury compounds

水銀の化合物。無機水銀化合物と有機水銀化合物があり,その毒性のために環境汚染が問題とされている。無機化合物には,塩化第二水銀 (消毒薬,触媒) ,硫化水銀 (朱肉顔料) などがある。急性の激烈な中毒を引起す (塩化第二水銀) ほか,慢性的に曝露されると頭痛,記憶力減退,震えなどの症状が現れる。有機化合物には,酢酸フェニル水銀メチル水銀,エチル水銀,ジメチル水銀などがある。医薬品,農薬殺虫剤と用途も広く,環境に放散される量も多かったが,環境汚染による被害が取上げられるようになってから農薬,殺虫剤として使用させない方向にある。特に,メチル水銀による水俣病の被害がよく知られているが,外国でも農作物種子消毒から中毒して大量死した実例がある。一時,農薬や殺虫剤として大量に散布されたため,禁止された現在でも農地に残留している。

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