翻訳|baptistery
洗礼を施すための建物で,教会堂に付属して設けられる。円形もしくは正多角形の平面をもち,堂内中央に洗礼のための水槽か洗礼盤を置く。最初期の洗礼は,川や特定の住宅の泉水池などで行われたが,4世紀のキリスト教公認以後,専用の建物がつくられ,ときに男女別に設けられた。洗礼は原罪とそれまでに犯した過ちを清める役割を担っており,その堂は教会堂と別個に建てられる。9世紀ごろから幼児の灌水礼が一般化するにつれ,教会内の玄関脇に設けられた簡単な洗礼盤で用が足りることになり,独立した建物は少なくなった。堂は多くバプテスマのヨハネに捧げられる。コンスタンティヌス帝によるローマのラテラノ洗礼堂(4~7世紀)や,ラベンナの正教徒洗礼堂(6世紀),フィレンツェ,ピサの各大聖堂付属洗礼堂(14~15世紀)等がイタリアに残り,フランスではポアティエのサン・ジャン洗礼堂(4世紀)が知られる。
執筆者:藤本 康雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…キリスト教建築は,教会堂(聖堂),洗礼堂,記念堂(マルティリウム),墓廟,修道院,学校などからなるが,教会堂建築はその中核をなすものである。本項ではローマ・カトリック教会とギリシア正教会の教会堂を中心に,その変遷を概観する。…
…これはその平面構造からみると集中式とバシリカ式の二つの原形から出発している。前者はいわゆるマルテュリアmartyria(殉教者または宗教的事跡などを記念する聖堂)および洗礼堂である。マルテュリアは殉教者の墓棺などを中心にした円形・八角形などのプランをもつ建築で,さらにその原形を求めれば,古代末期の廟(びよう)がこれであろう。…
※「洗礼堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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