改訂新版 世界大百科事典 「海洋前線」の意味・わかりやすい解説
海洋前線 (かいようぜんせん)
oceanic front
密度が異なる水塊が互いに相接するとき,その接面付近では,密度は接面に垂直な方向に連続的に変化するが,特に変化の大きい層を面として取り扱い,海洋前面という。この海洋前面と海面との交線を海洋前線という。たとえば日本の三陸沖合の太平洋では,北側に親潮と呼ばれる水塊が,その南側に黒潮と呼ばれる水塊が存在し,両水塊では,水温,塩分,密度,プランクトン,海色などに大きな違いがあり,海洋前面が形成されている。実際の海洋構造をみると,上述した境界にある層は大変厚く,その層は,小さな水塊の入り混じりによって形成されている。この層が海面と接する海域を混乱域あるいは混合域と呼んでいる。この混乱域と北側の親潮とが接する所を親潮前線,また南側の黒潮とが接する所を黒潮前線と呼ぶ。前面域の海洋構造を詳細に見ると,きわめて微細な水塊の集りにまで至り,前面の中,前面と親潮あるいは黒潮との境界層では,熱,海水,海水中物質などの拡散が活発に行われている。しかし,微細構造,拡散などの過程は,まだ十分研究されてはいない。
執筆者:寺本 俊彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報