化学辞典 第2版 「液間電位差」の解説
液間電位差
エキカンデンイサ
liquid junction potential
拡散電位ともいう.組成の異なる2種類の電解質溶液が互いに接触している場合には,両相中のイオン種の活量が異なるため,接触界面を通してこれらイオン種の拡散が起こるが,通常,個々のイオン種の移動速度が必ずしも等しくないので,拡散の進行とともに両相の接触界面には電荷の分離が起こり,両相間に電位差が生じる.このようにして生じた両相の内部電位の差を液間電位差あるいは拡散電位差という.液間電位差は液-液界面を含む系においては,多かれ少なかれ必ず現れるものであり,電極電位の測定や,電池の可逆電圧あるいは起電力から電池反応の自由エネルギー変化の計算などの場合,必ず補正されなければならない.液間電位差を小さくする実験的方法として,
(1)両相に同濃度の同じ無関係な電解質を多量共存させる方法,
(2)塩橋を用いる方法,
などがあり,これにより液間電位差を数 mV 以下にすることができる.また,液間電位差を理論的に見積もる近似式として,ヘンダーソン(Henderson)の式,プランク(Planck)の式などがある.両相の溶媒がともに水の場合には,その液間電位差は,通常,数十 mV を超えることはないが,両相の溶媒が異なるときの液間電位差は,きわめて大きくなる可能性があると同時に,その理論的補正や実験的除去が困難な場合が多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報