電気回路に電流を流す原因となる電圧の総称。EMFと略記することもある。起電力の測定には、 に示すように起電力をもつものの端子AB間に電圧計を接続してその指示を読む。起電力には、次に示すようにさまざまな種類・利用法がある。
(1)電池 電池内部におこる化学反応を利用するものである。これを化学起電力という。
(2)光(こう)電池 半導体でつくられた光電池は、それに光が当たったときのみ起電力が発生し電池としての働きをする。これを光起電力という。太陽電池はこれを応用したものである。
(3)熱起電力 2種類の金属の針金M1、M2を に示すように接続し、接合点1、2の間に温度差を与える。このとき、端子AB間に起電力が現れる。これを熱起電力という。熱起電力の大きさは接合点の温度差の二次関数として表され、適当な温度範囲では接合点の温度差に比例するとみなすことができる。この原理を応用したものが熱電対温度計である。熱起電力は1000分の1ボルト程度の小さな電圧なので、熱起電力の測定にはミリボルト電圧計を用いる。
(4)誘導起電力 のように、コイルに磁石を出し入れすることによって、コイルを貫く磁束を変化させると、コイルの端子ABの間に起電力が発生する(ファラデーの電磁誘導の法則)。この原理は、発電機、変圧器などに広く利用されている。
(5)圧電気 水晶のような結晶をひずませると結晶片の面の間に電圧が発生する。これを圧電気という。これは、結晶に電界(電場)を働かせると結晶がひずむ電歪(でんわい)現象と対になった現象である。この原理は、結晶型のイヤホン、ガスの点火器、水晶発振器、水晶時計などに利用されている。圧電結晶は絶縁体であり、普通の電圧計の針を振らせるほど大きな電流を流すことはできない。ここで用いる電圧計は、これに流れる電流が10-12アンペアと極度に小さい電位計とよばれるものである( )。
[山口重雄]
電流回路にエネルギーを補給して電流を流そうとする働き。回路に電流が流れると,抵抗における発熱(ジュール熱)などによりエネルギーが失われるので,電流が流れ続けるにはエネルギーの補給源が必要である。電池に抵抗を接続した回路では電池がその役割をする。1Cの電荷が電池を通過するたびに(J)のエネルギーを電池から受けとるとき,この電池は(V)の起電力をもつという。電池の電極付近には電荷が分布して静電場をつくっているが,その電位は正極(陽極)で最も高く,負極(陰極)で最も低い。単位電荷が電池の内部を負極から正極へ進むには電位の坂をのぼらねばならず,それには外からの助けが必要である。この仕事が上述の起電力で,仕事源は電池に蓄えられた化学的エネルギーである。この意味で電池における起電力は化学起電力と呼ばれる。正極と負極の電位差は,単位電荷が電池から受ける仕事すなわち起電力に等しい(回路に電流が流れているときには,電池の内部抵抗のため両極間の電位差は起電力より小さくなる)。回路にI(A)の電流が流れていると,電池が単位時間にする仕事はI(W)(=J/s)である。化学的起電力と並んで重要なものに,電磁誘導による起電力がある。磁場が時間的に変化するとそのまわりに渦状の誘導電場ができる。そこにおかれた回路に沿って電荷が動くと,誘導電場が電荷に力を及ぼして仕事をする。単位電荷が回路を1周する間に誘導電場がする仕事が誘導起電力である。誘導電場Eの回路に沿った成分をElとすれば,誘導起電力は回路を1周する線積分で表される。静磁場中を回路が動くときにも誘導起電力が発生する。このときは,回路を動かす外力がローレンツ力を媒介として電荷に仕事をする。このほか起電力には,熱起電力,光起電力,ピエゾ起電力(圧電気)など種類が多い。どの場合にも,何らかのエネルギー源が電荷にエネルギーを与えるのである。
執筆者:加藤 正昭
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略称EMF.一般に,電流を回路に流す駆動力のこと.起電力には,その生じる原因から分けて,電磁誘導,熱,光,電池における化学反応などがある.電磁誘導による起電力は,時間的に変化する磁束が閉回路をつらぬく場合,その閉回路に発生する.熱起電力は異種金属の両端を接合して閉回路をつくり,その両接合点を異なる温度に保った場合に発生するものであり,光起電力はp-n接合をもつ半導体に適当な波長の光を照射した場合に発生し,太陽電池はその応用である.電池の起電力は電池反応の化学親和力によるものであり,電池の平衡電位の符号を逆にしたものと定義される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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