活動度ともいう.理想溶液あるいは完全混合気体の成分iの化学ポテンシャルμiid は,その濃度を xi とすれば,
μiid = μ°i + RT ln xi
となる.ここで,RおよびTはそれぞれ気体定数および絶対温度であり,μ°i は用いられた濃度尺度に対する標準化学ポテンシャルである.一方,現実の溶液においては,分子間相互作用のため,その性質は理想溶液からずれ,上式は成り立たない.しかし,このずれの影響をすべて濃度の項に含ませて,実在の溶液の成分iでの化学ポテンシャル μi に対しても形式的に
μi = μ°i + RT ln ai
のように書き,この ai を成分iの活量あるいは活動度という.さらに,活量 ai を濃度 xi で割った量
fi ≡ ai/xi
を活量係数,あるいは活動度係数という.活量係数に対するこの定義と上記の二つの式より,実在溶液の化学ポテンシャルと理想溶液のそれとの差,すなわち過剰化学ポテンシャル μiex は,次式で表される.
μiex ≡ μi - μiid = RT ln fi
式よりわかるように,理想溶液からのずれはすべて活量係数にしわ寄せされることになり,実在溶液の性質は,活量係数の挙動の解析から明らかにできることになる.一般に,濃度の表し方としては,モル分率,質量モル濃度,モル濃度の3種類が用いられるので,各濃度尺度に対応して,それぞれの活量および活量係数が定義される.十分希薄な溶液では,それぞれの濃度尺度に対応する活量係数は,いずれもほとんど同じ値をとるが,濃度が高くなるにつれて相互にかなりの差が現れてくる.電解質溶液においては,溶質は中性分子の電離によって生成するイオンである.個々のイオンに対しては形式的には上述と同様に,その活量および活量係数を定義することができるが,これらの量は実測できず,熱力学的意味をもたない量である.しかし,これらの量は,熱力学的関係式のなかには,個々ではなく,つねにカチオンおよびアニオンの量が互いに組み合わさって電気的に中性の形で現れる.したがって,その幾何平均をとり,それぞれイオンの平均活量および平均活量係数が定義され,用いられる.たとえば,電解質 AxBy の溶液では,平均活量 a± および平均活量係数 f± は,次のように与えられる.
a±x+y = a+xa-y,f±x+y = f+xf-y
ここで,a+,a- および f+,f- は,それぞれカチオンおよびアニオンの活量および活量係数である.活量あるいは活量係数は蒸気圧,沸点,凝固点,溶解度,浸透圧などの測定により決定される.また,電解質溶液に対しては可逆電池を用いて,その平衡電圧の測定によっても決定できる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…溶液の一種の実効濃度で,活量ともいう。実在系に対する熱力学理論の展開において,G.N.ルイス(1907)により導入された概念である。…
※「活量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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