(読み)イツ

  • あふれ
  • あふ・る
  • あふ・れる
  • あぶれ
  • あぶ・る
  • あぶ・れる
  • はふ・る
  • 漢字項目

精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (動詞「あふれる」の連用形の名詞化。「あぶれ」とも)
① 水などがいっぱいになってこぼれること。物がこぼれ出ること。また、そのもの。おこぼれ。
※黒潮(1902‐05)〈徳富蘆花〉一「御庫(おくら)のあふれを攘(かす)むることばかり知って、誰一人諫言申す者も無いとは」
② 無法なふるまいをすること。乱暴すること。また、その人。
※幸若・未来記(室町末‐近世初)「あぶれ源氏のすゑすゑをたねをたってほろぼすべし」
③ 仕事、客などにありつけないこと。手もちぶさたなこと。また、その人。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「伏勢のあぶれはのろりのろり来る」
④ 駕籠(かご)かきなどの賃仕事で、契約解除、延期などで仕事がなくなったときの違約金。
※洒落本・古契三娼(1787)「よしはらのかご屋にもふてうがおすよ。〈略〉ふりまし、をもたまし、みちまし、あぶれなど言ひす」
⑤ 釣りや狩猟などで、獲物が得られないこと。
※風俗画報‐二五三号(1902)動植門「終日釣り廻りて全然アブレとなる事多し」
〘自ラ下一〙 あふ・る 〘自ラ下二〙 (「あぶれる」とも)
① 水などがいっぱいになってこぼれる。
※書紀(720)允恭元年一二月(図書寮本訓)「大中姫の捧げたる鋺(まり)の水溢(アフレ)て腕(たぶさ)に凝(こ)れり」
※造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉二編「血溢(アブ)れて注ぐが如く」
② こぼれるかと思われる程にいっぱいになる。また、感情や才気などがいっぱいに満ちている。
※平家(13C前)二「あぶれゐたる兵共」
※ぢいさんばあさん(1915)〈森鴎外〉「眉や目の間に才気が溢(アフ)れて見える」
③ 余り者になる。おちぶれる。零落して放浪する。
※源氏(1001‐14頃)東屋「見苦しきさまにて世にあふれんも知らず顔にて聞かんこそ心苦しかるべけれ」
④ 法を外れた言動をする。無法なふるまいをする。
※浄瑠璃・蝶花形名歌島台(1793)七「浪花(なには)の市中をあぶれありく五人男といふ者あり」
⑤ 仕事、獲物などにありつけない結果になる。
(イ) 余されて使ってもらえなくなる。仕事にありつけなくなる。買い手がつかないで残る。
※随筆・麓の色(1768)三「おちゃをひくをあふれるといふはあまれるなり」
※高架線(1930)〈横光利一〉「職業紹介所からあぶれて来た老人連が」
(ロ) 狩猟や釣りで、獲物がとれない。
※澪(1911‐12)〈長田幹彦〉三「他所で聞いたのとはまるで反対に、何処の漁場もみんなひどくアブれてゐた」
[1] 〘自ラ四〙
① 水があふれる。また、それほどに水量が満ちる。あふれる。
※万葉(8C後)一一・二八三三「葦鴨の集(すだ)く池水溢(はふる)とも儲溝(まけみぞ)のへに吾れ越えめやも」
② 外にはみ出るほどいっぱいになる。
③ 雲・波・風などが、いっぱいにわき上がる。わきたちあふれる。
※万葉(8C後)一四・三五一五「吾(あ)が面の忘れむ時(しだ)は国波布利(ハフリ)(ね)に立つ雲を見つつしのはせ」
[2] 〘自ラ下二〙 (一)に同じ。
※書紀(720)崇神一〇年九月(北野本訓)「首(かうへ)を斬(き)ること半(なかは)に過きにたり。屍骨(ほね)(さわ)に溢(ハフレ)たり」
[補注]→「はふる(放)」の語誌
〘自ラ下二〙 ⇒あふれる(溢)
〘自ラ下二〙 ⇒あふれる(溢)
〘名〙 ⇒あふれ(溢)
〘自ラ下一〙 あぶ・る 〘自ラ下二〙 ⇒あふれる(溢)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内のの言及

【石見国】より

…荘園制支配の実権は早くから在地領主層によって掌握され,たとえば鎌倉期に伊甘郷から益田荘本郷(益田本郷)に拠点を移した益田氏の場合,南北朝期には益田本郷の名田を再編成し,独自に本百姓―間人(もうと)体制を実現している。ひだの深い谷と険しい山に囲まれた石見国の地形は,また谷あいの溢(えき)(山間の小盆地を流れる湧水のこと)ごとに進められる開発耕地のあり方ともかかわって,小規模武士団の分立と庶子家の独立化をうながし,鎌倉末・南北朝初期その傾向はとくに顕著であった。 石見国における南北朝の内乱はとりわけ激烈で,今日に残る多数の城址もそのことを示している。…

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出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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