漬漁業(読み)づけぎょぎょう

改訂新版 世界大百科事典 「漬漁業」の意味・わかりやすい解説

漬漁業 (つけぎょぎょう)

魚群が流木,流れ藻などについたり,コウイカが産卵期に海底に沈んだ木の枝などに寄る習性を利用し,人工的に木,竹,柴(しば)などを海中に設置し,これらについた魚群などを漁獲する漁業。最終的な漁獲方法はさまざまである。シイラ漬漁業が代表的なもので,対馬暖流域で広く行われる。4~5mのモウソウチクを直径50cmほどの束にしたものを一つの漁場に1000mぐらいの間隔で20~50束敷設する。漁獲は集まっている魚群をまき餌などで竹の下から離し,まいてとる。柴の束を海底に沈めておくのを柴漬というが,ウナギ,イカ類,タコ,アナゴハゼエビカニなどが対象となる。この場合は,柴を漁船から静かに引き上げ,中にもぐりこんでいる魚介類を手網の中にふるい落とす。やや特殊な漁法であるが佐渡沖で江戸時代から行われているものにサンマ手づかみ漁がある。サンマは漂流物に卵を産みつける性質があることを利用する漬漁業の一種で,海藻をつけた米俵,むしろ,すのこなどを海面に浮かべ,集まったサンマを手づかみ,あるいは手網で漁獲するものである。

 この種の漁業は世界各地でも見られ,歴史も古い。マルタでは日本のシイラ漬と同じ型の漁業がある。とりあげには巻網の一種ランパラ網を用いる。柴漬に関しても各国の沿岸,河川,湖沼で行われ,ウナギ,小魚,エビ,カニなどがとられている。中央アフリカでは箱に葉を詰めて沈めておき,後に箱ごとあげて中に入った小魚をとる漁法がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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