潮汐リズム(読み)ちょうせきリズム(英語表記)tidal rhythm

改訂新版 世界大百科事典 「潮汐リズム」の意味・わかりやすい解説

潮汐リズム (ちょうせきリズム)
tidal rhythm

干潟に生息するコメツキガニシオマネキ干潮時には摂食をしたり鋏(はさみ)をさかんに振って求愛行動をしているが,潮がさしてくると巣穴の口に泥のフタをしてその中に閉じこもってしまう。シオマネキを小型容器に入れて,その活動を記録すると,採集地の海岸が干潮になるころさかんに動き回るので,シオマネキが自然の潮汐サイクルに近い周期の内因性リズムを持っていることがわかり,これを潮汐リズムという。この種のリズムは魚類ギンポムツゴロウ甲殻類のカニ,ヤドカリ,等脚類,端脚類,軟体動物の巻貝などの活動や,さらには砂浜に生息する単細胞生物のケイ藻の垂直移動でも見つかっている。海岸で見られる潮汐変化は季節や湾の形などによって複雑に変化するが,このような潮の複雑な変化にうまく対応した内因性リズムが端脚類の一種で確かめられている(図参照)。しかし,潮汐リズムと実際の潮汐にはごくわずかな差があるので,長期間記録を続けると,活動時刻と海岸の干潮時がしだいにずれを生じてくる。このずれは自然状態では実際の潮汐サイクルと同調することによって解消するのであるが,その同調因子は種によって異なり,ギンポでは水圧変化,ガザミでは水圧や温度変化,等脚類では水のかくはんであることが証明されている。潮の干満は1日2回約12.4時間周期で繰り返されるが,その干満の差は約15日周期でもって変動し,いわゆる大潮小潮の変化として知られている。海岸に生息する生物が約12.4時間周期の潮汐リズムのほかに大潮・小潮と対応した半月周リズムをもつことも知られている。
月周リズム
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