コメツキガニ(読み)こめつきがに

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コメツキガニ」の意味・わかりやすい解説

コメツキガニ
Scopimera globosa; sand bubbler crab

軟甲綱十脚目コメツキガニ科。甲は幅 1cmほどで,前方にせばまった丸みのある四角形であるが,甲面が強く隆起しているので球形に見える。鋏脚と歩脚の長節に長円形薄膜があり,「鼓膜」と呼ばれているが,どの程度音を感じるか確かめられていない。内湾の砂泥地に群生しており,干潮時に巣穴から出て砂泥をすくって口に入れ,有機質分だけ食べて砂泥は団子にし穴の周囲にばらまく。餌をとりながら両方の鋏を上下運動させる習性があり,群生した個体が一斉に行なう光景は壮観である。北海道南部からシンガポールまで分布する。同属の近縁種はインド西太平洋海域から 13種が知られている。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コメツキガニ」の意味・わかりやすい解説

コメツキガニ
こめつきがに / 米搗蟹
[学] Scopimera globosa

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目スナガニ科に属するカニ。内湾の砂泥地の干潟に群生する。北海道南部から沖縄諸島まで、黄海沿岸各地、シンガポールから知られている。甲幅1センチメートルほどで、前方がやや狭い丸みのある四角形であるが、甲面が強く隆起しているために球形にみえる。はさみ脚(あし)と歩脚(ほきゃく)の長節には長円形の薄い膜からなる鼓膜状の器官があり、聴覚に関与しているものと考えられている。満潮時には砂中に潜っているが、干潮になると巣穴から出て、はさみで砂泥をすくって口に入れ、有機質だけを食べて残りを団子にして穴の周囲にばらまく。餌(え)をとりながら、体を持ち上げ、両方のはさみを緩やかに上下運動させる。この行動は雌雄とも行い、その意味は明らかでないが、和名はこれを米を搗(つ)くのに見立てたものであろう。干潟に個体数が少ないと巣穴の周囲を縄張り(テリトリー)として守るが、個体数が多くなると縄張り意識がなくなる。

[武田正倫]

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