澄・清・洗(読み)すます

精選版 日本国語大辞典 「澄・清・洗」の意味・読み・例文・類語

すま・す【澄・清・洗】

〘他サ五(四)〙
① 洗ってきれいにする。
落窪(10C後)一「帯刀曹司にて、『まづ水』とて、御足すまさす」
源氏(1001‐14頃)若菜上「御ぐしすましひきつくろひておはする」
② 水などのにごりがなくなるようにする。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)二「濁水を澄渟(スマシ)清浄にあらしめつるときには、復滓穢無くなりぬ」
③ 音がよく響き通るようにする。
※源氏(1001‐14頃)明石「手づかひいといたう唐めき、ゆのね深うすましたり」
④ 心のけがれを除く。また、心を落ち着かせる。
※霊異記(810‐824)上「景戒性を稟(う)くること儒(さか)しくあら不(ず)、濁れる意澄(スマシ)難し〈興福寺本訓釈 澄 須万之〉」
※源氏(1001‐14頃)幻「御おこなひにも心すまし給はんことかたくやと見奉り給」
⑤ (「耳、目をすます」の形で) ある物事に気持を集中する。
平家(13C前)一「やはら此刀をぬき出し、鬢にひきあてられけるが氷などの様にぞみえける。諸人目をすましけり」
⑥ 世の中が平安な状態になるようにする。世をしずめる。
※平家(13C前)一二「平家を攻おとし、ことしの春ほろぼしはてて、一天をしづめ、四海をすます」
⑦ 人気がなくなるようにする。
今昔(1120頃か)二八「只暫し此て有らむ。然て、大路を澄して、歩(かち)より可行き也」
理非道理を明らかにする。
※古文真宝笑雲抄(1525)三「訟者をば平にし、理非をきっかとすますべきぞ」
⑨ (自動詞的に用いて) まじめそうな顔をする。気取る。また、何も感じていないような、平気な様子をする。
※評判記・満散利久佐(1656)野関「すましたるとみゆる所おほし、なべての人、うちとけがたく、心をかれて、人のよりつきすくなし」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「文三には平気で澄ましてゐるお勢の心意気が呑込めぬ」
⑩ 他の動詞の連用形に付けて、補助動詞のように用いる。
(イ) 心を集中して行なう。精神を統一して…する。
※源氏(1001‐14頃)明石「いとかぎりなき御琴の音なり。これは、あくまでひきすまし、心にくくねたき音ぞまされる」
(ロ) うまく…する。完全に…する。
※平家(13C前)九「さしも御秘蔵候いけずきをぬすみすまいてのぼりさうはいかに」
日葡辞書(1603‐04)「キキ sumasu(スマス)〈訳〉良く完全に聞く」

すまし【澄・清・洗】

〘名〙 (動詞「すます(澄)」の連用形の名詞化)
① 洗ってきれいにすること。洗髪せんたく
※宇津保(970‐999頃)国譲中「かの山ざとに物し給ふ人、むかへたてまつり給て、御すましのことなどせさせたてまつり給へ」
※枕(10C終)八七「おほやけ人、すまし、をさめなどしてたえずいましめにやる」
酒席で、杯をすすいだりする器。また、それに入れてある水。
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「杯洗(スマシ)の水は鍋の塩の辛(かれ)へのを調合して水ぎれだ」
④ 水などのにごりをなくすこと。
⑤ =すましじる(澄汁)①〔日葡辞書(1603‐04)〕
※料理物語(1643)八「かげをおとすとは、すましにたまりをすこしさす事也」
⑦ まじめそうな様子をすること。気取ること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報