ぞう‐し ザウ‥【曹司】
〘名〙
① 奈良・
平安時代、官司内に設けられた、執務のための正庁。また、執務のための部屋。
※続日本紀‐天平二年(730)六月庚辰「神祇官
曹司災」
②
宮中または官司などに設けられた、上級官人や
女官などの部屋。また、独立していない
公達(きんだち)が、親の邸内に与えられた部屋。つぼね。
※続日本紀‐宝亀八年(777)三月戊辰「幸二大納言藤原朝臣魚名曹司一、賜二従官物一有レ差」
※
源氏(1001‐14頃)
桐壺「もとよりさぶらひ
給ふ
更衣のざうしを、ほかにうつさせ給ひて」
※徒然草(1331頃)二三八「堀川大納言殿伺候し給し御ざうし」
③ (━する) 宮中や
貴族の邸内に部屋をもらって仕えること。また、その人。部屋住み。
曹司住み。
※大和(947‐957頃)六一「とまり給へるみざうしども、いとおもひのほかにさうざうしき」
※栄花(1028‐92頃)浦々の別「殿の内に年比曹司して候ひつる人々」
⑤ 平安時代の大学寮の教室。東曹、西曹に分かれていた。
※本朝文粋(1060頃)七・申請重弁定斉名所難学生同時棟詩状〈
大江匡衡〉「江家先祖音人卿、預判文章博士菅原是善卿、皆是、東西曹司之祖宗、試場評定之亀鏡也」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
ぞう‐し〔ザウ‐〕【▽曹司】
1 宮中や官庁内に設けられた女官・官吏などの部屋。
「更衣の―を、ほかに移させ給ひて」〈源・桐壺〉
2 貴族の邸内に部屋を与えられて仕えること。また、その人。
「殿の内に年ごろ―して候ひつる人々」〈栄花・浦々の別〉
3 貴族の邸内に設けられた、子弟の部屋。また、そこにすむ子弟。→御曹司
4 平安時代の大学寮内の部屋。東曹と西曹とに分かれる。
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ぞうし【曹司】
〈そうじ〉ともいう。官庁,役所の建物を表す場合は《続日本紀》天平2年(730)6月条に〈神祇官曹司災〉と見えるのをはじめ,奈良時代の用例が多い。平城宮跡から〈造曹司所〉と書いた木簡が出土したが,これは平城宮内の官庁の庁舎建設を担当する役所と考えられている。また平安宮の東南の隅を〈鳥の曹司〉というが,ここはもと主鷹司という役所があったため,その廃止後も名称のみが残ったのである。《続日本紀》天平宝字2年(758)9月条に〈明法曹司言〉とあるのは,官庁を抽象的に表した用例で,後に〈法曹〉の語を生む。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報