災害復旧事業(読み)さいがいふっきゅうじぎょう

改訂新版 世界大百科事典 「災害復旧事業」の意味・わかりやすい解説

災害復旧事業 (さいがいふっきゅうじぎょう)

災害対策基本法は国および地方公共団体,指定公共機関等の災害復旧実施義務をうたい,防災計画の作成を定めている。防災計画には中央防災会議が定める防災基本計画とそれに基づく地域防災計画とがある。これらに基づいて,災害予防,災害応急対策と並んで実施されるのが災害復旧対策である。災害復旧事業の対象は,(1)公共土木施設(河川,道路,港湾漁港海岸等),(2)農林水産業施設(農地,農業用施設,林道,農林水産業共同利用施設等),(3)文教施設(国・公立学校施設等),(4)厚生施設(水道施設等),(5)その他(下水道等の都市施設,市街地内堆積土砂排除等)である。国の直轄事業については2ヵ年で,補助事業(地方公共団体等の行う工事を国が補助するもの)については3ヵ年で完了する方針のもとに,事業の施行が図られる。補助事業における国庫負担金は〈公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法〉等により決められるが,激甚災害については〈激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害法)〉(1962公布)によって特別の措置がとられる。このほか災害関係地方債の発行許可等の財政措置が講じられる。また被災者の災害復興を助けるため,中小企業金融公庫等による中小企業者に対する災害復旧貸付け,農林漁業金融公庫等による農業・漁業者に対する資金融通等が制度化されている。以上のように,災害復旧事業の実施と財政金融措置を講ずることが制度上の災害復旧である。

 原形復旧のみでは災害の再発が予想される場合,改良を行ったほうが機能増進を見込める場合には,災害復旧事業と併せて災害関連事業が行われる。都市においても,大災害が都市改良の契機となることがある。レンChristopher Wrenらが作成した1666年ロンドン大火復興計画案は拒絶されたとはいえ,建築物の不燃化と形態規制,道路の幅員14フィート以上への拡幅舗装は実現し,レン設計のセント・ポール大聖堂のドームと多数の尖塔がロンドンの面目を一新した。1923年関東大震災後の東京復興においても,焦土全面買上げによる新都造営という当初の計画は放棄されたが,焼失した既成市街地において3000haをこえる土地区画整理が実施され,隅田川の新橋梁,昭和通り等が新たな都市像を現出させた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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