炳霊寺石窟(読み)へいれいじせっくつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「炳霊寺石窟」の意味・わかりやすい解説

炳霊寺石窟
へいれいじせっくつ

中国甘粛(かんしゅく)省永靖(えいせい)県の南西約40キロメートルの小積石山中にある石窟寺。炳霊の名はチベット語の「十万仏」に由来する。1952年と1963年に調査された。上寺に窟1、龕(がん)3、下寺に窟149、龕34、その間の洞溝に窟八の計195がある。多数を占める下寺では五胡(ごこ)十六国時代の西秦(せいしん)の窟2、北魏(ほくぎ)の窟2、龕1、隋(ずい)の窟4、龕1、初唐の窟2、龕1、盛唐の窟14、龕104、中・晩唐の窟3、龕10、明(みん)の窟2、龕1があり、盛唐のものが多い。最大、最古の第169窟は幅26.75、奥行8.56、高さ15メートルの不規則な天然洞で約30の龕があり、西域(せいいき)風の石彫石胎泥塑(せきたいでいそ)、泥塑の像と紅・青緑・黄を使った仏説法図などの壁画とからなり、西秦建弘元年(420)の墨書銘がある。隋の第八窟は造像と壁画で、唐代のは造像が多い。

[下條信行]

『甘粛省文物工作隊・炳霊寺文物保管所編『中国石窟 炳霊寺石窟』(1986・平凡社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「炳霊寺石窟」の意味・わかりやすい解説

炳霊寺石窟 (へいれいじせっくつ)
Bǐng líng sì shí kū

中国の甘粛省永靖県の西約50km,黄河上流の小積石山にある紅砂岩の仏教石窟。〈炳霊〉は,チベット語で〈十万仏〉を意味する。1952年来の調査により183にのぼる石窟や龕(がん)が知られている。唐代の窟・龕が多く,ついで北魏代のものがあり,明窟もある第169号窟は,西秦の建弘元年(420)の墨書銘がある高さ5mほどの自然窟で,現段階では中国最古の石窟。石仏塑像のほか説法図や飛天などの壁画があり,とくに円輪光背の説法図は西方と関連して重要。
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世界の観光地名がわかる事典 「炳霊寺石窟」の解説

へいれいじせっくつ【炳霊寺石窟】

中国の甘粛(かんしゅく)省蘭州(らんしゅう)(ランチョウ)の永靖県黄河北岸、積石山にある石窟。全長2キロにわたる石窟は、十六国時代の西秦から隋、唐、明、清時代まで造営された。険しい峡谷にあってイスラム教徒による破壊や外国人探検家による持ち出しを逃れたため、貴重な仏像が多く残されている。岩壁には190あまりの石窟があり、大小700体近くの仏像が残されているが、なかでも最も有名な大仏は171龕にある唐時代の大仏で、最も古い大仏は壁に「西秦建弘元年」(420年)と記された第169窟である。石窟上部には壁画も残されており、階段桟道から観光できる。◇「炳霊」とは、チベット語で「十万仏」という意味である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炳霊寺石窟」の意味・わかりやすい解説

炳霊寺石窟
へいれいじせっくつ
Bing-ling-si shi-ku

中国,甘粛省永靖県の黄河北岸,小積石山にある仏教石窟。 1952年に発見された。上寺と下寺に分れるが,上寺には2つの石窟が,また下寺には洞窟 36ヵ所,壁龕 88ヵ所が残っている。西秦,北魏,唐,明の各時代に造られたものと思われ,内部には多くの石仏や,若干の壁画が遺存する。

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世界大百科事典(旧版)内の炳霊寺石窟の言及

【甘粛[省]】より

…この敦煌莫高窟,一般には千仏洞の名で知られるこの地の490余の洞窟群は,4~14世紀にかけて掘られた石窟寺,すなわち横穴式の寺院であるが,そこにある大量の壁画と仏像は,中国の歴史や美術にとっては貴重な資料であって,この石窟は中国三大石窟芸術宝庫の一つといわれている。また,天水には,約7000余の仏像がある麦積山石窟と高さ27mの石仏座像のある永靖炳霊寺石窟とがあり,これらはいずれも約1500年の歴史を有している。そのほか,甘粛回廊にある嘉峪関は,明代14世紀後半に万里の長城の西端に建設され,〈天下雄関〉と称せられた関城である。…

※「炳霊寺石窟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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