無喉頭のリハビリテーション

六訂版 家庭医学大全科 の解説

無喉頭のリハビリテーション
(のどの病気)

 喉頭(こうとう)がんや下咽頭(かいんとう)がんにより喉頭を摘出した場合には、喉頭を介して呼吸発声することができなくなります(図20)。呼吸は前頸部気管を直接縫いつけた孔をつくり、ここから行います。声を失い、口や鼻を通して呼吸ができなくなるため、いろいろな問題が起こります。

 まず臭い風味が弱くなるので、料理を焦がしたり味付けが濃くなるなどの問題が起こります。フーフーと熱いものを冷ますことができず、麺類をすすることも難しくなります。鼻がかめなくなるので鼻みずがたまります。鼻で空気を加湿したり粉塵(ふんじん)細菌を捕える作用がなくなり、乾燥した空気が前頸部の呼吸の孔から直接出入りするので痰が多くなり、冬場には気管から出血することもあります。

 これらの問題については、それなりの対処法があります。声に関しては、空気を食道内に取り込んでゲップのようにして音を出す食道発声と、頸部から機械をあてて振動音を送ることによる電気喉頭発声、気管と食道の間に小さな道をつくり、発声時に前頸部の呼吸の孔を押さえて作製した小さな道へ空気を送り込み振動させる気管食道(ろう)発声(シャント発声)などの代用音声により、声を取りもどすことができます。代用音声、とくに食道発声の習得には練習が必要で、地域にある喉頭摘出者の会や言語聴覚士による指導を受けます。しかし、とっさの場合や助けを呼ぶ場合には代用音声では不十分なので、黄色いハンカチで合図するなどの工夫をしている地域もあります。

 なお、喉頭を摘出した人は身体障害者3級に認定されるので、人工喉頭に要する費用は公的に支払われます。

 乾燥した空気や粉塵、細菌などが前頸部の呼吸孔から入り込まないように、ガーゼやハンカチで作った小さなエプロンで孔をカバーします。また加湿器やネブライザーを購入して、乾燥しないように気を配る必要があります。鼻みずが多い場合には、耳鼻咽喉科で相談します。臭いについては食道発声ができるようになるとある程度回復しますが、ガスもれなどに気づかないこともあるので、警報機などの設置が必要です。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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