麺は本来麦の粉末を意味するが、これを材料として線状などに成形した食品が麺類である。したがって、この解釈からすれば、イタリア料理のパスタ類、中国の餃子(ギョウザ)、焼売(シューマイ)、餛飩(ワンタン)など、小麦粉をこねて薄く伸ばしたものもすべて麺類である。しかし、現在の日本においては、材料は麦に限らず、一方、形は薄く伸ばして細く切ったり、線状や管状などに押し出して成形したものを麺、麺類という。
以上のように日本での定義から、麺類の種類をあげると、うどん、冷や麦、そうめん、きしめん、そば、はるさめ、中華麺、スパゲッティ、マカロニ、米粉(ビーフン)などが含まれる。
麺類には、乾燥した乾麺、麺にしたままの生(なま)麺、それをゆでたゆで麺、また即席麺のように油で揚げた揚げ麺などがある。料理をつくるときの扱い方はそれぞれ異なるが、共通しているのは、ゆでる、煮る、湯を加えるなど、水分を加えて加熱することが多い。保存性については、各麺類によりかなりの差がある。
[河野友美・多田鉄之助・山口米子]
麺類の歴史については多くの記録がある。麦を粉にして、これをこねて伸ばすか、薄く伸ばして切ればできるからである。そのため、パンよりも古くからつくられていたようで、紀元前6000~前5000年ごろ、すでにアジア地域では存在したといわれている。一方、これが西方へ伝わり、イタリアでパスタ類として発達した。
麦類は粉になりやすく、また、そのまま煮て食べるのには味が米ほどよくないところから、このような麺など粉食の形で食用とすることが早くから行われていたのである。
日本の麺については、『古事類苑(るいえん)』(1914刊)では、麺の解説を「めん(麺)は麦末なり、麺を以て製するものに数種あり、中に於て饂飩は、うんどん又はうどんと云(い)ふ、めんを溲(ひた)して団となし、拗棒(ようぼう)を用ゐて之(これ)を展(の)べ、切りて細条となし、煮て之を食ふ(下略)」といい、次にそばも麺類の一つとして解説を加えている。江戸の文献には多くの麺類が出ているが、うどんのほかに切麦(きりむぎ)の名称が出ている。切麦はうどんよりいくらか細く切るものをいう。『合類日用料理抄』(1689)に切麦について「右うどんの仕よう同前也(なり)、切様と冷し申候分ちがい申候、うどんより細に切申候」とある。麺類の名称は『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(931~938ころ)などに出ている。また、麦(めん)ということばも用いられており、その解説に「麦の細屑也」とある。『江戸流行料理通大全』(初篇(しょへん)1858)には「三羹(さんかん)三の事」という表題のもとに、「日本では三は専ら用ゆれ共三羹は中華の沙汰(さた)也、……汁まんぢう、うんめん、ちよくめん是(こ)れを三といふ也」とある。それをみても、江戸とその以前には麺の解釈は広い。『貞丈雑記(ていじょうざっき)』(1846)に「餛飩(こんとん)又温飩(うんとん)とも云ふ、小麦の粉にて団子の如(ごと)く作る也(なり)。中にはあんを入れて煮たる物なり」とある。江戸の初期から麦切(むぎきり)の名称があり、『料理物語』(1643)に「麦きりは大麦の粉也、うちやうはきり麦のごとくうちて、みじかくきりて、汁うはをきは、そばきりのごとくにしてよし」とある。
[河野友美・多田鉄之助・山口米子]
日本での麺類は、多くのものに農林規格(JAS(ジャス))などがあり、それぞれ、細かい規定がある。たとえば、同じ小麦粉をこね、細く伸ばすか、切ったものでも、太さにより、そうめん、冷や麦、うどんなどの区別がある。
[河野友美・多田鉄之助・山口米子]
『新島繁・柴田茂久監修『麺類百科事典』(1984・食品出版社)』▽『伊藤汎著『つるつる物語――日本麺類誕生記』(1987・築地書館)』▽『大塚滋著『パンと麺と日本人――小麦からの贈りもの』(1997・集英社)』▽『安藤剛久著、全国乾麺協同組合連合会監修『乾めん入門』(1999・日本食糧新聞社)』▽『奥山忠政著『文化麺類学・ラーメン篇』(2003・明石書店)』▽『石毛直道著『麺の文化史』(講談社学術文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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