犬養部(読み)いぬかいべ

改訂新版 世界大百科事典 「犬養部」の意味・わかりやすい解説

犬養部 (いぬかいべ)

大化前代の品部(しなべ)の一つ。県犬養(あがたいぬかい)氏,稚(若)犬養わかいぬかい)氏,阿(安)曇犬養(あずみいぬかい)氏,海犬養(あまのいぬかい)氏の4氏を伴造(とものみやつこ)とするが,それら4氏に率いられる部民は犬養部の一種だけで,名称からでは統属関係が明らかでない。その職掌については,供御に奉る肉をとるために猟犬飼育・調教・駆使したとする説と,宮門や屯倉(みやけ)など大和政権の公的施設を守衛するために番犬を使ったとする説とが対立していたが,県犬養氏の同族に巨椋(大蔵)(おおくら)氏があり,稚犬養氏の同族に椋(内蔵)(くら)氏があること,稚犬養,海犬養の氏名宮城十二門の門号となっていること(平安初期に皇嘉(こうか)門,安嘉(あんか)門と改称),また,全国各地に〈みやけ〉と〈いぬかい〉の地名の併存例が少なからず現存することなどからすれば,番犬説が妥当であろう。ただし,阿多御手犬養氏などは猟犬をもって奉仕したものであろう。犬養部は比較的早く廃れたらしく,おそくとも大化(645-650)には公民とされた。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「犬養部」の解説

犬養部
いぬかいべ

犬甘部とも。大化前代の部。番犬を飼養し,屯倉(みやけ)や倉庫・宮門などの守衛に奉仕した。猟犬を飼育・訓練して狩猟に奉仕していたとする説もある。犬養部の伴造(とものみやつこ)としては,県(あがた)犬養・稚(わか)(若)犬養・阿曇(あずみ)(安曇)犬養・海(あま)犬養の4氏があり,このうち稚犬養と海犬養の氏名は宮城十二門の門号にとられており,宮門守衛にあたっていたと考えられる。犬養部の遺制は令制にはまったくみられない。

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世界大百科事典(旧版)内の犬養部の言及

【県犬養氏】より

…宮門,屯倉(みやけ)などの守衛に当たる犬養部を率いる4伴造氏(県犬養,稚犬養,安曇犬養,海犬養)の一つ。大和朝廷の直轄領である屯倉の守衛・管理を職としたため,朝廷直轄地を意味する県を犬養に冠したと考えられるが,確かなことはわからない。…

※「犬養部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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