公民(読み)コウミン

デジタル大辞泉 「公民」の意味・読み・例文・類語

こう‐みん【公民】

国政地方公共団体公務に参加する権利義務を持つ者。市民
公務員民間。「給与公民格差」
学校の教科の一。現代社会の仕組みや社会倫理などについて学ぶ。公民科
律令制で、口分田くぶんでんを受け、戸籍に登録され、租税を納める人民。良民。
[類語]市民国民人民万民ばんみん四民臣民同胞国人くにびと国民くにたみたみ民草たみくさ億兆おくちょう蒼生そうせい蒼氓そうぼう赤子

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精選版 日本国語大辞典 「公民」の意味・読み・例文・類語

こう‐みん【公民】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代の人民の身分を示す語。班田収授法によって口分田の班給をうけ、国に対して租庸調雑徭などの貢納の義務を負っていた農民。品部・雑戸は除かれた。おほみたから。⇔私民
    1. [初出の実例]「今所在課丁不幾、而混雑公民迄有未進」(出典:熱田神宮古文書‐嘉祥三年(850)三月一一日・太政官符案)
  3. 国または地方公共団体で、参政権をもつ国民。市民。狭義では、旧憲法下において、特定の資格を有し、市町村の公務に参与する権利義務を認められた者。
    1. [初出の実例]「其公民たるの権を失ふものとす」(出典:市制及町村制(明治二一年)(1888)市制・九条)
  4. こうみんか(公民科)」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「公民」の意味・わかりやすい解説

公民
こうみん
citizen

今日では市民と同義に用いられることが多い。現代社会の構成員として、政治ないし公務に積極的、能動的に参加するという地位、資格、活動の側面を強調していうことば。しかし古くは、公民は律令(りつりょう)制度のもとで貢納の義務を負う農民や、わが国の明治憲法下の旧市制・町村制において公務に参与する一定の限られた資格を有する住民をさした。日本国憲法下でもこのことばは法律用語として用いられている(労働基準法7条、教育基本法8条など)。したがってこのことばは、明治憲法下では臣民として参政権を有する立場を表すものであり、最近では、「公民科」「公民館」「公民権」などの用法にみられるように、政府や役所の側から参政権をみた場合に用いられるニュアンスがある。しかし、アメリカの黒人解放運動の一環として「公民権civil rights運動」という訳語が用いられている場合の公民は、市民とまったく同義である。同じことばが国連の国際人権規約の場合には「市民的権利」と訳されているからである。

[飯坂良明]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「公民」の解説

公民
こうみん

古訓はオオミタカラ。古代の身分用語。当時の平民・百姓などの語とほぼ同義とされる。律令制下では課役を負担した一般庶民をさす用語で,皇族・官人や奴婢などの賤民,雑戸・品部(しなべ)などとは区別された。しかし史料によっては皇族・官人層を含む用例もあり,公民の語が常に一定の意味で用いられたかは疑問。なお律令制以前,推古朝の頃には臣・連・伴造・国造・百八十部と連記され,大和朝廷の支配に連なる人民として公民の語が用いられていた。

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世界大百科事典(旧版)内の公民の言及

【公地公民】より

…すべての土地と人民は朝廷に属するとし,豪族の私地私民に対立する概念。大化改新によって私地私民を廃止し,公地公民の政策が打ち出され,約半世紀後の大宝律令の施行によって公地公民制が確立したというのが通説である。しかし,すでに中田薫が指摘しているように,律令においては,口分田(くぶんでん)は私田とされていた。…

【公民教育】より

…公民ということばは,きわめて日本的で,日本社会の特異性からきており,もともと市民(英語citizen,フランス語citoyen,ドイツ語Staatsbürger)といったほうがよい。市民を意識的に育成することによって,社会の秩序の維持と発展をめざす教育を公民教育とよぶ。…

【市民社会】より

…ほぼ18世紀前半まで,それらは人間の公的=政治的な存在様式にかかわる言葉として,語源的に古代都市国家や中世都市に由来する伝統的な意味を保っていた。citoyenはポリスpolisのpolitai,キウィタスcivitasのcivesと同様に政治的共同体を構成する〈公民〉を,またBürgerは〈政治的体制の中で生活する人々〉を指し,civilやbürgerlichも公共的な政治生活との意味上の関連を失わなかったからである。したがって18世紀前半までは,société civile,bürgerliche Gesellschaft,civil societyは,アリストテレスのコイノニア・ポリティケkoinōnia politikē,キケロのソキエタス・キウィリスsocietas civilis以来の伝統を引きずっており,端的に権力関係をうちに含む政治社会,あるいは人的共同体としての国家を意味する概念であった。…

【社会科教育】より

…授業開始は1947年9月。戦前の修身,公民,地理,歴史のたんなる融合ではなく,つぎのような目的をもった教科として成立した。(1)自主的,建設的で,しかも批判的な能力の育成,(2)社会生活を総合的,連関的に理解し,社会の諸問題を事実に即した知識をもって合理的に解決する能力の育成,(3)知識と生活を密着させ,それらの学習を通じての社会にとって好ましい態度や習慣の育成。…

【平民】より

…(1)古代律令制下で位階官職をもたない一般人民をさした語。百姓,公民,良民と同様な意味で用いられた身分呼称であった。《令義解(りようのぎげ)》で〈家人(けにん),奴婢(ぬひ)〉について〈すでに平民に非ず〉といわれているように,賤民である家人や奴婢は平民身分から除外された。…

※「公民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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