環境音楽(読み)かんきょうおんがく(英語表記)environmental music

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「環境音楽」の意味・わかりやすい解説

環境音楽
かんきょうおんがく
environmental music

一般に,コンサートで行われる音楽に対し,集中して聴かれることを目的としない音楽をさす。その形態はさまざまであるが,作業効率の上昇や精神の安定など,機能的に使われる BGM (→バックグラウンド・ミュージック ) と,「環境の芸術化」を唱えて音と環境の関係を主体的・創造的にとらえようとする音楽に大別される。後者は L.ルッソロらの未来派や E.サティの『家具の音楽』シリーズを淵源とし,J.ケージの『4分 33秒』 (1952) に象徴される音楽で,非楽音を音楽および音楽の素材ととらえ直す意識の転換を促した。その後,M.シェーファーサウンドスケープや,サウンドインスタレーション (音響による装置) の試み,ミニマル・ミュージックなどへと展開している。また B.イーノはある場所と結びついた音楽を『アンビエント・ミュージック (包囲する音楽) 』と名づけて発表した。

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世界大百科事典(旧版)内の環境音楽の言及

【音楽】より

…大衆社会の登場とともに出現したレコードは,〈今,ここで〉という音楽行為の一回性を否定し,W.ベンヤミン流に言えば〈アウラaura〉の消滅した新しい複製芸術のあり方を示している。 レコードやカセットの普及は,バックグラウンド・ミュージック(BGM,環境音楽)を生み出す直接的な契機となった。バックグラウンド・ミュージックは,労働の能率を向上させたり,精神を安定させたりするために使用される柔らかなムードをもった音楽である。…

【バックグラウンド・ミュージック】より

…そのための代表的なアメリカの企業ミュザックMuzak社の音楽例を分析した研究によれば,供給される音楽は既製の耳慣れた作品に基づきながら,楽曲形式,楽器編成,リズムや和声の点で,原曲よりも単純化され,また,音量の変化がおとなしくされている。 1970年代に入ると,このような狭義のBGMだけでなく,われわれの生活環境が含んでいる音楽や音響を,〈環境音楽〉として考察する傾向が強くなった。ここでは,寺院や教会の鐘,乗物や機械の音,川や風や木の音など,環境に内在する音響が広く含まれることになった。…

※「環境音楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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