1948年に制定された日本の消費生活協同組合法は,同法に基づいて設立された協同組合はその名称に消費生活協同組合もしくは生活協同組合という語を用いなければならないことと定め,またそれ以外の団体がその名称にこれらの語を用いることを禁止している。しかしこのような法律上の定義とは別に,消費者による協同組合をひろく総称して生活協同組合ということも多く,この場合には消費(者)組合などと同義である。いずれの場合にも,略して生協と呼ばれることが少なくない。後者の意味での生協の歴史は,世界的には産業革命期のイギリスに始まり,1844年に設立されたロッチデール公正先駆者組合の成功を画期として,本格的に発展をみるに至った。とくにイギリスや北欧諸国での発展が著しく,これらの国では各種の協同組合の中で主要な形態をなしている。また,社会主義諸国においても,消費財の分配機構として生協は重要な役割を果たしている。
日本では,1879年に最初の生協設立の試みがなされ,その後労働運動の発展とともにその一翼として,あるいは企業の福利事業の役割を担うものとして,また都市住民や学生の生活改善のために,などさまざまなかたちで生協の組織化が図られたが,第2次大戦以前には,きわめて限られた範囲にとどまった。それは,協同組合に関する基本法として1900年に制定された産業組合法(産業組合)のうちの購買組合に関する規定の変則的適用により,きびしい規制をこうむりつつようやく免税措置が認められるにとどまった,というように,法制が生協に著しく不利であったからでもあった。しかし,敗戦直後の窮乏期に,生活防衛の必要から生協組織の爆発的な発展が生じ,これを背景として新たに,消費生活協同組合法(1948)が制定されることになったのである。同法は,独禁法や税法など他の法令の適用を受ける法人格を有する(消費)生活協同組合,同連合会の組織についての規定からなり,その要件として諸先進国の例にならい地域または職域による人と人の結合であること,加入脱退の自由,議決権の平等,剰余金の利用高に応じた分配,などを掲げ,事業の種類,組合員の利用の自由と員外利用の制限,単位組合は都道府県の区域内に限られること,設立手続,主務官庁(厚生省,都道府県)などを定めている。同法に基づく生協は,当初から現在まで,1000組合前後で大きな変化はなく,その商品供給高もほぼ一貫して小売総額のおよそ2%を占めている。これら生協の中央連合組織として日本生活協同組合連合会(日生協)があり,その下に地域別,種類別の連合組織があるが,日生協は全国消費者団体連絡会(全国消団連)の中心になり,消費者運動を推進するうえで重要な役割を果たしている。
→協同組合
執筆者:久世 了
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
一般市民が生活の向上を目的に各種事業を行う協同組合で,生協,コープと略称される。消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号)に基づくものを消費生活協同組合といい,一般に「生協」と呼ぶ場合,市民を組合員とした市民生協を指す場合が多い。2016年度の組合数は976で,組合員数6663万人となっている。生協は組合員からの出資金で運営している。組合員は生協を利用でき,運営にも参加できる。原則として生協の利用は組合員のみに限られ,出資金は脱退時に払い戻される。生協組織には日本生活協同組合連合会(日本生協連)や全国生活協同組合連合会(全国生協連),全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)といった連合会もある。単位生協は各連合内で共同仕入れや共同事業を行うことも多いが,それぞれの生協は独立して経営されており,競合する部分もある。
著者: 小林雅之
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
…(2)水産業協同組合法(1948年)――漁業協同組合,漁業生産組合,漁業協同組合連合会,水産加工業協同組合,水産加工業協同組合連合会,水産業協同組合共済会。(3)消費生活協同組合法(1948年)――消費生活協同組合,消費生活協同組合連合会。(4)中小企業等協同組合法(1949年)――事業協同組合,事業協同小組合,火災共済協同組合,信用協同組合,協同組合連合会,企業組合,中小企業団体中央会。…
…
[歴史]
しかしこのような消費者運動は,比較的近年の産物である。世界的に見ても19世紀の末までは,1844年のロッジデール公正先駆者組合の設立以来イギリスを中心に発展した生活協同組合の活動が,消費者運動のほとんど唯一の形態をなしていた。生活協同組合はその後も発展を続けているが,20世紀に移るころからそれ以外の形態の運動が成長してくることになり,この面ではもっぱらアメリカが最先進国の地位を占めている。…
…24年,安部磯雄らと日本フェビアン協会の結成に参加,翌25年には日本プロレタリア文芸連盟にも加わったが,思想的にはアナーキズムの立場をとり,プロレタリア文学と政党の関係についてマルクス主義を奉ずる蔵原惟人と激しく論争,また25年に宮島資夫らと《文芸批評》を創刊,32年には《自由を我等に》の創刊にかかわった。初期の生活協同組合運動の実践的な指導者としても知られ,また第2次大戦後は東京都杉並区長,および日本ユネスコ協会理事に選ばれた。著書に《左傾思潮》(1921),《アナキズム芸術論》(1930)など。…
…労働者がその生活上の事故や変化にともなって発生する経済的諸問題の解決に取り組む自主的事業運動のこと。労働組合運動が生産・労働過程における生活諸条件の改善のために活動するのに対し,これは消費・流通過程での生活攪乱要因の解消や除去を目指し,一般に生活協同組合(生協)運動という形態をとって,中間利潤や中間諸経費の排除・節減とその奪還を試みる。消費生協もしくは購買生協のほか,労働金庫,共済事業,住宅生協,医療生協,旅行会などの運動がある。…
※「生活協同組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新