由・因・縁(読み)よし

精選版 日本国語大辞典 「由・因・縁」の意味・読み・例文・類語

よし【由・因・縁】

〘名〙 (「寄(よ)す」と同根で、物事に関係づけていくことの意)
① 物事の起こった理由。由来。わけ。いわれ。
書紀(720)推古一一年二月(岩崎本平安中期訓)「故、猪手連の孫を娑婆連と曰ふ。其れ是の縁(ヨシ)なり」
② 物事の内容。事の趣旨。また、形式名詞のようにも用いる。こと。わけ。むね。儀。いきさつ。次第。
※書紀(720)舒明即位前(北野本訓)「願(こ)ふ、摩理勢を得(たまは)りて、其の所由(ヨシ)を推(かむか)へむと欲(おも)ふ」
平治(1220頃か)中「鎌田兵衛は、忠宗に向ひて酒をのみけるが、此のよしをききて」
由緒ありげな家柄。また、その人たちの持つ美的感覚。情趣、風流、おくゆかしさ。→由有り
※更級日記(1059頃)「円融院の御世より参りたりける人の、いといみじく神さび、古めいたるけはひの、いとよし深く」
④ 関係があること。よすが。たよりどころ。つて。ゆかり。縁。
万葉(8C後)四・七六一「早河の瀬にゐる鳥の縁(よし)無み思ひてありし吾が児はもあれ」
⑤ かかわりを持つための方法。手段。てだて。すべ。→よしない(由無)
※万葉(8C後)二・二一〇「恋ふれども 逢ふ因(よし)を無み 大鳥の 羽易(はがひ)の山に 吾が恋ふる 妹はいますと 人の云へば」
⑥ それを口実にすること。それをきっかけとして、物事を行なうこと。口実。きっかけ。機縁。機会。
※万葉(8C後)一一・二六八五「妹が門行き過ぎかねつひさかたの雨も降らぬか其を因(よし)にせむ」
※不如帰(1898‐99)〈徳富蘆花〉中「其の再会の縁由(ヨシ)となれるが為めに病其ものの悲む可きをも喜ばんずるまで」
⑦ それらしく見せること。そのようなそぶりを見せること。実質を伴わない、形ばかりのこと。しるし。かた。ふり。
平家(13C前)一「当座恥辱をのがれむが為に、刀を帯する由あらはすといへども」
⑧ 伝え聞いた事柄であることを示すことば。…とのこと。
※俳諧・曠野(1689)員外「むかしあまた有ける人の中に、虎の物語せしに、とらに追はれたる人ありて、独色を変じたるよし」
[語誌]→「ゆえ(故)」の語誌

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