中野重治晩年の長編小説。1965-69年,《群像》に連載。64年に中野重治が日本共産党から除名されてからの数ヵ月を現在時とし,同じく作者の分身であり互いに友人どうしである2人の主人公津田(日本資料社社員,共産党員)と田村(作家,共産党中央委員)との目覚め際の,あるいは寝入り端の,あるいは街を歩いている間の群がりきたる回想という形で1930年以来の三十数年を作品の中に含む。このような形で作家は四・一七ストライキ,部分核停条約批准,新日本文学会第11回大会など現在の問題についての共産党内の対立と彼自身の党からの除名という事態を見据え,現在の根拠としての50年分裂と六全協,さらにプロレタリア文学運動にさかのぼって日本革命運動の病患を剔抉(てつけつ)した。
執筆者:満田 郁夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中野重治(しげはる)晩年の長編小説。1965年(昭和40)1月~69年9月『群像』に連載。69年刊。64年に中野重治が日本共産党から除名されたのちの数か月を現在時とし、同じく作者の分身であり互いに友人同士である2人の主人公津田貞一(日本資料社社員、日本共産党員)と田村榊(作家、日本共産党中央委員)との、目覚めぎわの、あるいは寝入りばなの、あるいは街を歩いている間の群がりきたる回想という形で、1930年以来の三十数年を作品のなかに含む。このような形で作家は、四・一七ストライキ、部分核停条約批准、新日本文学会第11回大会など現在の問題についての日本共産党内の対立と彼自身の党からの除名という事態を見据え、現在の根拠としての「五〇年分裂」と「六全協」とを、さらにプロレタリア文学運動にさかのぼって日本革命運動の病患を剔抉(てっけつ)した。
[満田郁夫]
『桶谷秀昭著『中野重治 自責の文学』(1981・文芸春秋)』
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