刑事訴訟において、被告人が有罪だということに「合理的な疑い」が残らないほどまでに、検察官が証明しなければ、裁判所は被告人を有罪にしてはならないという原則を示す法諺(ほうげん)。「疑わしきは被告人の利益に」ともいう。その萌芽(ほうが)はすでにローマ法にみいだすことができるが、刑事訴訟においてこの原則が確立するのは、近代になって人権の尊重が強調されるようになってからである。被告人は「無罪の推定」を受けるという原則と同じ意味をもつ。フランス革命の際に発せられた人権宣言は、「すべての者は、犯罪者と宣告されるまでは、無罪と推定される」(9条)と規定し、世界人権宣言(1948)も、「何人(なんぴと)も……法によって有罪が立証されるまでは、無罪の推定を受ける権利を有する」(11条)として、この原則を明言している。なお、「一人の罪なき者を罰するより10人の罪人が免れたほうがよい」Better ten guilty escape than one innocent sufferという格言も同様の意味で用いられる。
[大出良知]
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