癒着胎盤(読み)ユチャクタイバン

日本大百科全書(ニッポニカ) 「癒着胎盤」の意味・わかりやすい解説

癒着胎盤
ゆちゃくたいばん

分娩(ぶんべん)により胎児を娩出したあと、胎盤が子宮筋に癒着したままはがれ落ちない症状。胎盤は、胎児に酸素や栄養素を供給するとともに、胎児の各種臓器のかわりに消化や排泄(はいせつ)および呼吸を代行するが、通常は胎児娩出後に役割を終えると母体の子宮筋層からはがれ落ちる。しかし、妊娠と同時に子宮内部に形成されて分娩とともに子宮から脱落する基底脱落膜欠損していたり、形成不全があって胎盤絨毛(じゅうもう)が子宮筋層内に侵入したりすると、胎盤は子宮壁との癒着のために脱落せずに子宮筋層にとどまり、剥離(はくり)が困難となる。なお、胎盤に欠損がみられず正常で、容易に用手剥離(直接手ではがす)が可能であるものは付着胎盤とよんで区別する。

 癒着胎盤は、絨毛組織が筋層表面と癒着しているが子宮筋層には侵入していない楔入(せつにゅう)胎盤、子宮筋層内に限局して胎盤絨毛が侵入している嵌入(かんにゅう)胎盤、絨毛が子宮筋層を抜け子宮漿膜(しょうまく)面まで貫通している穿通(せんつう)(穿入)胎盤に分類される。

 癒着胎盤の原因には、子宮内膜の先天的な形成不全や、子宮内膜炎、内膜掻爬(そうは)術など炎症損傷既往帝王切開子宮奇形などが考えられる。子宮口を覆うように胎盤が付着する前置胎盤に伴うことも多い。また多産婦や高齢妊婦に多く、卵子提供を受けた場合の出産で確率が高まることが指摘されている。胎盤圧出法によっても剥離しないことが多く、その場合には用手剥離が試みられるが、大量出血から死に至る危険性もあり、子宮全摘術も検討される。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...

実質賃金の用語解説を読む