癒着胎盤(読み)ユチャクタイバン

デジタル大辞泉の解説

ゆちゃく‐たいばん【癒着胎盤】

胎盤子宮癒着した状態。通常、胎盤は分娩後に自然にはがれて子宮から排出されるが、癒着胎盤の場合は剝離しにくく、大量出血を起こしたり感染症にかかる危険性が高くなる。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

癒着胎盤

分娩後に自然とはがれる胎盤が、子宮の壁にくっつき、はがれにくくなる疾病。癒着の度合いは様々で、単なる付着から子宮の筋層に深く細胞が侵入しているケースまである。事前の検査では、癒着の有無を確実に診断するのは難しいという。通常、発生率は2万人に1人。しかし、帝王切開や人工中絶の前歴があると、さらに確率は高まる。胎児が子宮から出る口をふさいだ形で胎盤ができる「前置胎盤」が、帝王切開の傷跡の残る「子宮前壁」に付着した場合、確率は20%以上になる。事故調査報告書では、調査の結果として、帝王切開の傷跡とは関係のない「子宮後壁に付いた前置胎盤だった」と指摘し、「このため加藤容疑者は癒着の可能性は低いと考えていた」と分析する。

(2006-03-11 朝日新聞 朝刊 福島中会 1地方)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

癒着胎盤
ゆちゃくたいばん

分娩(ぶんべん)により胎児を娩出したあと、胎盤が子宮筋に癒着したままはがれ落ちない症状。胎盤は、胎児に酸素や栄養素を供給するとともに、胎児の各種臓器のかわりに消化や排泄(はいせつ)および呼吸を代行するが、通常は胎児娩出後に役割を終えると母体の子宮筋層からはがれ落ちる。しかし、妊娠と同時に子宮内部に形成されて分娩とともに子宮から脱落する基底脱落膜が欠損していたり、形成不全があって胎盤絨毛(じゅうもう)が子宮筋層内に侵入したりすると、胎盤は子宮壁との癒着のために脱落せずに子宮筋層にとどまり、剥離(はくり)が困難となる。なお、胎盤に欠損がみられず正常で、容易に用手剥離(直接手ではがす)が可能であるものは付着胎盤とよんで区別する。
 癒着胎盤は、絨毛組織が筋層表面と癒着しているが子宮筋層には侵入していない楔入(せつにゅう)胎盤、子宮筋層内に限局して胎盤絨毛が侵入している嵌入(かんにゅう)胎盤、絨毛が子宮筋層を抜け子宮漿膜(しょうまく)面まで貫通している穿通(せんつう)(穿入)胎盤に分類される。
 癒着胎盤の原因には、子宮内膜の先天的な形成不全や、子宮内膜炎、内膜掻爬(そうは)術など炎症や損傷の既往、帝王切開、子宮奇形などが考えられる。子宮口を覆うように胎盤が付着する前置胎盤に伴うことも多い。また多産婦や高齢妊婦に多く、卵子提供を受けた場合の出産で確率が高まることが指摘されている。胎盤圧出法によっても剥離しないことが多く、その場合には用手剥離が試みられるが、大量出血から死に至る危険性もあり、子宮全摘術も検討される。[編集部]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

癒着胎盤
ゆちゃくたいばん
Placenta accreta
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 胎盤が子宮筋に強固に付着して剥離(はくり)できない状態です。一部剥離した部分からの出血が多量となり、出血性ショック播種性血管内血液凝固症候群(はしゅせいけっかんないけつえきぎょうこしょうこうぐん)(DIC)を引き起こし、妊産婦死亡の原因ともなる疾患です。胎盤の主要な構成物である絨毛(じゅうもう)と子宮筋層との関係から3つに分類されています。

 楔入(せつにゅう)胎盤は絨毛が子宮筋層表面と癒着するが筋層内には侵入していないもの、嵌入(かんにゅう)胎盤は絨毛が子宮筋層内に深く侵入しているもの、穿通(せんつう)胎盤は絨毛が子宮筋層を貫通して子宮漿膜面に達するものです。前置胎盤に合併することが多く、前置胎盤の2500例に1例、それ以外の胎盤では2万2000例に1例といわれています。

原因は何か

 胎盤付着面の子宮壁に脱落膜が形成されない、あるいは帝王切開などによる瘢痕(はんこん)組織のため脱落膜の形成が不十分であることより、絨毛が子宮筋層に達するために発生すると考えられています。

診断と治療

 前置胎盤ではない場合の癒着胎盤では、分娩前診断の報告例はほとんどなく一般的には分娩前診断はできないといわれています。前置胎盤の場合には超音波やMRIによる分娩前診断が試みられていますが、十分であるとはいえない状態です。

 いずれにしても、分娩時にはがしてみるまでは、確定的な診断は困難です。出血量が多くなければ、胎盤をはがさずに経過観察し、後日何らかの方法で摘出することが可能ですが、出血を伴う場合には大量出血に至ることが多く、動脈血流遮断・子宮摘出など母体を救命するためのさまざまな方法が考案されています。

上妻 志郎

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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