子宮内膜炎(読み)シキュウナイマクエン(英語表記)Endometritis

デジタル大辞泉 「子宮内膜炎」の意味・読み・例文・類語

しきゅうないまく‐えん【子宮内膜炎】

子宮内膜に細菌が感染して起こる炎症。

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精選版 日本国語大辞典 「子宮内膜炎」の意味・読み・例文・類語

しきゅうないまく‐えん【子宮内膜炎】

  1. 〘 名詞 〙 種々の細菌に感染して起こる子宮内膜の炎症。分娩時、流・早産時、月経時の不摂生が原因。急性と慢性があり、膿性の帯下(たいげ)や下腹痛や発熱などがみられる。

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六訂版 家庭医学大全科 「子宮内膜炎」の解説

子宮内膜炎
しきゅうないまくえん
Endometritis
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 子宮内膜炎とは、子宮内腔をおおっている子宮内膜の炎症のことです。

原因は何か

 細菌感染による炎症が原因になります。感染経路は、上行性感染によるものが大部分ですが、まれにリンパ行性、血行性、下行性(腹腔内から卵管を介して)感染も認められます(図5)。

 下行性感染を起こすものでは結核(けっかく)性のものが多く、卵管結核から子宮内膜へ波及します。起炎菌としては、大腸菌、腸球菌、連鎖球菌(れんさきゅうきん)、ブドウ球菌、淋菌(りんきん)結核菌バクテロイデス、ペプトコッカスなどがあります。

 月経が定期的にある女性では、子宮内膜の機能層は周期的にはがれ落ちるので、細菌が侵入してきても月経時に排出されてしまうこともあります(図6)。閉経後や分娩後、流産後の女性では周期的な子宮内膜の剥脱(はくだつ)がないので、上行性感染を起こしやすいと考えられます。また、子宮内膜生検(しきゅうないまくせいけん)子宮卵管造影(しきゅうらんかんぞうえい)、卵管通水術などの子宮内操作時に細菌が侵入することもあります。

症状の現れ方

 下腹部の不快感、下腹部痛、微熱などの症状が多いのですが、膿性帯下(のうせいたいげ)、不正出血などもみられることがあります。全身的な症状はあまりみられないことが多いようです。

検査と診断

 内診により、子宮に圧痛が認められます。炎症がさらに付属器や骨盤内にまで拡大すると付属器領域やダグラス()(子宮と直腸の間の腹膜腔)にも圧痛が認められます。子宮からの分泌物の培養検査により、起炎菌を特定します。

 子宮内膜炎は、急性と慢性とに分類できます。急性子宮内膜炎は、子宮内膜の機能層に感染が起こっているもので、月経時に機能層が剥離(はくり)することにより細菌も排出されて、自然に治ることもあります(図6)。

 慢性子宮内膜炎は、感染が子宮内膜の基底層まで波及する場合で、月経時に基底層が排出されないため感染は慢性化します。基底層に残る細菌は、再生されてくる機能層で再度感染するため、経過は慢性化します。

 結核性子宮内膜炎や老人性子宮内膜炎では慢性に経過します。老人性子宮内膜炎では、子宮頸管(けいかん)狭窄(きょうさく)や閉鎖を伴うと子宮瘤膿腫(りゅうのうしゅ)を形成することもあります。

治療の方法

 起炎菌が特定されている場合には、その菌に感受性のある抗生剤を使用します。起炎菌が特定されるまでの間は、通常、広域スペクトル(効果の範囲が広い)の抗生剤を使用します。また、消炎薬を併用することもあります。流産後や分娩後では子宮収縮薬を併用することで子宮内腔に残った組織の排出を促すこともあります。子宮瘤膿腫を形成している場合には、頸管を開大し、うみを排出する必要があります。

病気に気づいたらどうする

 下腹部痛や異常な帯下(たいげ)があれば、産婦人科を受診してください。

関連項目

 子宮筋層(実質)炎

竹内 亨


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改訂新版 世界大百科事典 「子宮内膜炎」の意味・わかりやすい解説

子宮内膜炎 (しきゅうないまくえん)
endometritis

子宮体内膜炎ともいう。細菌が子宮頸管を上行して子宮体内膜に達して炎症を起こすものの総称で,急性子宮体内膜炎が代表的疾患である。原因菌は連鎖球菌,淋菌,ブドウ球菌,大腸菌,そのほか嫌気性菌などであり,典型的かつ臨床症状の重篤なものに産褥(さんじよく)性子宮内膜炎がある。子宮内膜炎の誘因には,流産,人工妊娠中絶,産褥子宮感染,性交による淋菌感染,婦人科的手術または子宮内操作,IUD挿入,タンポン挿入,放射線治療などがある。症状は,細菌の毒性が弱いときには比較的軽度であるが,毒性が強いときには重篤な症状を呈し,炎症が子宮筋層に波及して子宮筋層内膜炎となる場合や,さらに激しいものは敗血症を招くものもある。診断は,発熱,下腹痛,血性または膿性帯下,子宮の腫大,圧痛,白血球増加などにより容易である。治療は,安静,抗生物質,子宮収縮剤の投与を行う。頸管閉塞がある場合は拡張を行い,貯留物を誘導し,IUDなどの異物がある場合はこれを除去する。結核性子宮内膜炎は,結核菌感染による慢性子宮内膜炎で,卵管結核からの下行性感染によって起こり,20~30歳の若年婦人に多い。老人性子宮内膜炎は,子宮の老人性萎縮のため,子宮頸管が狭小化して閉鎖することにより分泌物が貯留し,大腸菌などの上行感染により生ずる子宮留膿腫であり,慢性に経過する。周期性の下腹痛があり,子宮体癌でも同様の症状をみる場合があるので,これとの鑑別を要する。子宮頸管内膜の感染症である子宮頸内膜炎は,症状として帯下の増加がみられ,頸管カタルと呼ばれる場合もあり,慢性頸内膜炎がその代表である。原因は子宮体内膜炎とほぼ同様であるが,そのほかに体質異常,自律神経失調症子宮腟部糜爛(びらん)などを有する婦人に起こりやすいとされている。症状は子宮体内膜炎より軽度であるが,なかには難治性のものもある。治療法は原因により異なる。
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家庭医学館 「子宮内膜炎」の解説

しきゅうないまくえん【子宮内膜炎 Endometritis】

[どんな病気か]
 子宮内膜は、子宮の内側をおおっている粘膜(ねんまく)で、その粘膜に細菌が感染してひきおこされる炎症です。子宮内膜炎は産褥(さんじょく)性と非産褥性に分けられます。
 産褥性子宮内膜炎(さんじょくせいしきゅうないまくえん)は、分娩(ぶんべん)後に悪寒(おかん)をともなう高熱、膿性帯下(のうせいたいげ)(膿(うみ)のようなおりもの)、不正性器出血といった症状が現われます。子宮は収縮不良となり、圧痛(押すと痛い)がおこります。
 非産褥性子宮内膜炎(ひさんじょくせいしきゅうないまくえん)は、全身的な症状は少なく、膿性帯下の増加、下腹部の不快感、熱感がおもな症状となります。高齢の女性に発症した場合、子宮内に膿がたまり、子宮留膿腫(しきゅうりゅうのうしゅ)と診断されることも多くみられます。
[原因]
 流産、分娩、子宮内の手術、性感染症(「性感染症(STD)とは」)などが誘因となって発症します。流産後および分娩後は子宮内遺残物(いざんぶつ)(絨毛(じゅうもう)または胎盤(たいばん)や卵膜(らんまく)など)により子宮内感染が持続し、炎症が強くなります。
 多くは外部からの菌の侵入によるものですが、結核菌の場合は血行性感染により発症します。
 子宮留膿腫は、子宮頸部(しきゅうけいぶ)または子宮体部(しきゅうたいぶ)の悪性腫瘍(あくせいしゅよう)により頸管狭窄(けいかんきょうさく)をおこして発症することもあるので、十分注意が必要です。
[治療]
 膿性の帯下または子宮内の細菌の培養検査を行ない、感受性のある抗生物質の注射または内服をします。流産や分娩後の子宮内膜炎は、子宮内の遺残物が原因で炎症が持続していることが多いため、子宮内の遺残物を除去(掻爬(そうは))し、子宮収縮剤を使用します。また子宮留膿腫の場合は、子宮口を広げて、たまった膿を排出させることが必要です。

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百科事典マイペディア 「子宮内膜炎」の意味・わかりやすい解説

子宮内膜炎【しきゅうないまくえん】

子宮内膜に化膿菌(連鎖球菌,ブドウ球菌,淋(りん)菌,大腸菌,結核菌など)が感染して起こる炎症。急性と慢性がある。子宮頸管(けいかん)の粘液栓(せん)が弱まった場合(流産,分娩(ぶんべん),産褥(さんじょく),月経時など),頸管ポリープがある場合などに予防が不完全であると急性内膜炎となる。症状は発熱,下腹部不快感,下腹痛,血性膿性帯下(たいげ)などで,早期に適切な治療をしないと慢性になりやすい。安静にして抗生物質,サルファ剤などを投与する。慢性内膜炎の中で特殊なものは結核性の場合で,月経不順,無月経となることが多い。
→関連項目月経過多月経困難淋病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子宮内膜炎」の意味・わかりやすい解説

子宮内膜炎
しきゅうないまくえん
endometritis

子宮腔の内側の粘膜層の炎症。頸管内膜と体部内膜それぞれの内膜炎があるが,一般に前者は特別な誘因がなくても炎症が起り,しかも慢性化しやすい傾向がある。それに対して後者は,産褥期や自然流産,人工妊娠中絶後に最も起りやすく,慢性化することが多い。また淋菌性の腟炎や頸管炎から炎症が子宮内に及ぶこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の子宮内膜炎の言及

【子宮】より

…子宮は生理的には小骨盤腔のほぼ中央に位置し,前傾前屈の位置をとっているのが普通であるが,位置異常として子宮が病的に後転する子宮後屈症,子宮が全体として前後左右に位置を変える子宮転位,また子宮が上下方向へ移動する子宮上昇や子宮脱などがある。子宮体内膜の炎症には急性子宮内膜炎があり,連鎖球菌,淋菌,大腸菌などが原因菌となり,分娩,流産,人工妊娠中絶,IUDなどが誘因となる。炎症が進行し,子宮筋層へ及ぶと子宮筋層内膜炎となり,症状はいっそう強くなる。…

※「子宮内膜炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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