胎盤は通常,子宮体部に付着するが,子宮の入口(内子宮口)にかかって付着している場合,これを前置胎盤という。妊娠末期から分娩に入るころ,子宮がたびたび収縮して卵膜が子宮からはがれるようになり,子宮口が開いてくると,この部分に付着していた胎盤がはがれて出血を起こす。前置胎盤は全前置胎盤,一部前置胎盤,辺縁前置胎盤に分けられるが,出血の量は内子宮口にかかっている胎盤の程度により異なり,前2者では大出血となるため,大部分の場合,帝王切開が必要になるが,後者は破水後に止血して正常な分娩経過で済むこともある。原因は子宮内膜に病変があって受精卵が正常な位置に着床できないためであることが多く,過度の搔爬(そうは),子宮内膜炎,子宮筋腫,子宮奇形,内膜瘢痕(はんこん)化のほか多胎妊娠,子宮発育不全などが原因となる。妊娠末期から分娩にかけての大出血は常位胎盤早期剝離(はくり)の場合にも起こるが,前置胎盤の場合は腹痛など他に症状を伴わないことが特徴。
執筆者:室岡 一
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胎盤の付着位置の異常で、胎盤の大部分または一部が子宮下部(子宮峡)に付着し、内子宮口に及ぶものをいう。妊卵が異常に下方に着床することによる。胎盤が内子宮口にかかる程度によって分類され、全部を覆うものを全前置胎盤、一部分を覆うものを一部前置胎盤、内子宮口縁に達するものを辺縁前置胎盤という。症状は無痛性の子宮外出血で、妊娠後半期、とくに残りの3か月および分娩(ぶんべん)開始時にみられるのが特徴とされ、診断の目標となる。この出血は、子宮口が開いてくるとともに付着していた胎盤がはがれることによる。
前置胎盤でも程度の軽いものは、分娩の進行に伴い、胎児先進部の圧迫などによって止血され経腟(けいちつ)分娩が可能な場合もあるが、高度なものでは帝王切開が必要となる。頻度は全分娩の約0.5%で、経産婦(とくに多産婦)に多くみられる。したがって、子宮体部の内膜を損傷しないようにすること、掻爬(そうは)手術などを受けないことなどが予防となる。
[新井正夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
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