胎盤が子宮下部に付着し、その一部が内子宮口に及ぶものをいいます。内子宮口にかかる程度により、全前置胎盤、一部前置胎盤、
妊娠後半期の子宮下部の伸展や子宮口の開大に伴い、胎盤の一部が
分娩時には子宮収縮に伴い
臨床症状が重要で、妊娠後半期に無痛性の性器出血がある場合には本症を疑って診察にあたります。内診で指を子宮口内に挿入すると大出血を起こすことがあります。確定診断には超音波断層法が用いられ、内子宮口をおおう胎盤像が描写されます。内子宮口付近の観察には経腟的超音波検査が極めて有効です。
妊娠中期には前置胎盤のように見えていたものが妊娠経過とともに内子宮口から離れていくことがあるので、本疾患が疑われた場合は定期的な観察が必要です。
本症の管理としては安静が重要なので、出血の有無にかかわらず妊娠28週ころに入院するのが一般的です。出血がある場合に子宮収縮を伴っているようなら子宮収縮抑制薬を用います。出血量が500mlを超えるようであれば、帝王切開による胎児および胎盤の娩出が考慮されます。
上妻 志郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
胎盤は通常,子宮体部に付着するが,子宮の入口(内子宮口)にかかって付着している場合,これを前置胎盤という。妊娠末期から分娩に入るころ,子宮がたびたび収縮して卵膜が子宮からはがれるようになり,子宮口が開いてくると,この部分に付着していた胎盤がはがれて出血を起こす。前置胎盤は全前置胎盤,一部前置胎盤,辺縁前置胎盤に分けられるが,出血の量は内子宮口にかかっている胎盤の程度により異なり,前2者では大出血となるため,大部分の場合,帝王切開が必要になるが,後者は破水後に止血して正常な分娩経過で済むこともある。原因は子宮内膜に病変があって受精卵が正常な位置に着床できないためであることが多く,過度の搔爬(そうは),子宮内膜炎,子宮筋腫,子宮奇形,内膜瘢痕(はんこん)化のほか多胎妊娠,子宮発育不全などが原因となる。妊娠末期から分娩にかけての大出血は常位胎盤早期剝離(はくり)の場合にも起こるが,前置胎盤の場合は腹痛など他に症状を伴わないことが特徴。
執筆者:室岡 一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(桑野優子 フリーライター / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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胎盤の付着位置の異常で、胎盤の大部分または一部が子宮下部(子宮峡)に付着し、内子宮口に及ぶものをいう。妊卵が異常に下方に着床することによる。胎盤が内子宮口にかかる程度によって分類され、全部を覆うものを全前置胎盤、一部分を覆うものを一部前置胎盤、内子宮口縁に達するものを辺縁前置胎盤という。症状は無痛性の子宮外出血で、妊娠後半期、とくに残りの3か月および分娩(ぶんべん)開始時にみられるのが特徴とされ、診断の目標となる。この出血は、子宮口が開いてくるとともに付着していた胎盤がはがれることによる。
前置胎盤でも程度の軽いものは、分娩の進行に伴い、胎児先進部の圧迫などによって止血され経腟(けいちつ)分娩が可能な場合もあるが、高度なものでは帝王切開が必要となる。頻度は全分娩の約0.5%で、経産婦(とくに多産婦)に多くみられる。したがって、子宮体部の内膜を損傷しないようにすること、掻爬(そうは)手術などを受けないことなどが予防となる。
[新井正夫]
(2014-9-1)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
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