神滅神不滅(読み)しんめつしんふめつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神滅神不滅」の意味・わかりやすい解説

神滅神不滅
しんめつしんふめつ

中国の六朝(りくちょう)時代(220~589)に霊魂(神(しん))の不滅をめぐって展開された論争総称。中国に仏教が移入されて輪廻(りんね)応報思想が知られるようになると、輪廻応報を信ずる仏教信奉者は神不滅を唱え、輪廻応報を認めない仏教反対派の人々は神滅を説いて、両者の間で神滅神不滅の論争が行われた。神の不滅とは、人間は死ぬと、肉体(形)は滅びるが、霊魂(神)は不滅で、次の新しい身体に宿って次の生を営むことをいう。この不滅の神が存在するからこそ、人間は過去、現在、未来の三世にわたって天上、人間、(修羅(しゅら))、畜生餓鬼、地獄の六道(一説に五道)の間を輪廻し、己の行いに対して相応の報いが己に及ぶという。神滅とは、人間は死ぬと、その肉体(形)とともに霊魂(神)も消滅することをいう。すなわち、神は消滅するので輪廻応報はないという。その代表的な神不滅論廬山(ろざん)の慧遠(えおん)(334―416)の『沙門(しゃもん)不敬王者論』第五形尽神不滅篇(へん)や、宗炳(そうへい)(375―443)の『明仏(めいぶつ)論』である。神滅論では范縝(はんしん)(450?―510?)の『神滅論』が有名である。この論争は六朝時代を通じて行われ、論理的な収拾がつかなかったが、梁(りょう)の武帝(464―549)が神不滅論に加担するに及んで、不滅論に軍配があがった。

[小林正美]

『『神滅不滅の論争』(『津田左右吉全集 第19巻』所収・1965・岩波書店)』

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