日本歴史地名大系 「神田郷」の解説 神田郷かんだごう 山口県:長門国豊浦郡神田郷「和名抄」高山寺本に「神田」と記し、「加无多」と訓じるが、刊本では「加無多」と訓じる。ともに「かむた」と読む。「延喜式」(神祇)の臨時祭に「凡住吉社長門国封租穀者、令封戸徭夫運送、除運功之遺、令進徭分、用修社料、但豊浦(とよら)郡封戸徭夫者、便留充御蔭社」とあって、住吉神社の神封のうち豊浦郡の封戸については、長門国の住吉坐荒御魂(すみよしのあらみたま)神社(現住吉神社)にあてられていたことがわかるが、長門国に設けられた封戸の規模については、「住吉神代記」に「神戸九十五烟在長門国」、「新抄格勅符抄」にも「住吉神封二百三十九戸、其六十六戸在長門国」とみえ、その数は一致していない。 神田郷かんだごう 広島県:備後国品治郡神田郷「和名抄」高山寺本・東急本ともに「神田」と記すが訓を欠く。「福山志料」は「カムタ」と読む。「三代実録」貞観二年(八六〇)二月二八日条に「備後国神田神」に従五位下を授くとあり、同社にちなむ郷名とされてきた。「福山志料」は雨木(あまぎ)村(現福山市)の岩畳(いわだたみ)神社に、「西備名区」は向永谷(むこうながたに)村(現福山市)の神田八王子(かんだはちおうじ)神社に比定。「日本地理志料」は岩畳神社を中心に、雨木・助元(すけもと)(現福山市)、上安井(かみやすい)・下安井・宮内(みやうち)(現芦品郡新市町)の諸村をあてる。 神田郷かんだごう 兵庫県:丹波国多紀郡神田郷「和名抄」所載の郷。同書高山寺本・東急本・名博本ともに訓を欠く。「丹波志」は郡北西部の大山(おおやま)地区とするが、同地区は河内(こうち)郷とみられる(→河内郷)。また「大日本地名辞書」は郡域南西端に近い今田(こんだ)に比定するが、近年、伝承に神田(こうだ)庄内にあったという母神山を波々伯部(ほほかべ)神社の山とみて、郡域中央部の日置(ひおき)・八上(やかみ)地域に比定する説がある。 神田郷かんだごう 岐阜県:美濃国賀茂郡神田郷「和名抄」所載の郷。長門国豊浦郡の同名郷の訓注「加无多」に従う。神領に由来する郷と思われるが、詳細は不明。「延喜式」神名帳に神田神社、美濃国神名帳に従五位下神田明神がみえ、両社と関連する郷と推定する説もあるが(「大日本地名辞書」「日本地理志料」など)、座地など未詳である。比定地について「新撰美濃志」以来、郡の最北東部の現東白川(ひがししらかわ)村神土(かんど)にあてる説がある。地内には神田神社があり、また近世初期には神田・神戸とも記されたという。 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報 Sponserd by