移動図書館(読み)イドウトショカン

デジタル大辞泉 「移動図書館」の意味・読み・例文・類語

いどう‐としょかん〔‐トシヨクワン〕【移動図書館】

巡回図書館

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「移動図書館」の意味・読み・例文・類語

いどう‐としょかん‥トショクヮン【移動図書館】

  1. 〘 名詞 〙 書籍を積んだ自動車で定期的に町村を回り、本の貸し出しをするもの。巡回図書館。移動文庫。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「移動図書館」の意味・わかりやすい解説

移動図書館
いどうとしょかん

自動車図書館、巡回文庫ともいう。通常の図書館施設が乏しい地域や病院、職場、学校そのほかの団体向けに、ブックモビルマイクロバスの改造車)などを用いて図書資料を運搬し、貸出しや読書相談などのサービスを行う図書館。日本では人口密度が薄い地域に、図書館の分館を設置するまでの過渡的なサービスとして行われる場合も多い。なお、書店が過疎地域のために、巡回図書館サービスを行っている例もある。

 イギリスでは19世紀中ごろに、馬車による巡回図書館があったが、アメリカでは1905年メリーランド州の図書館によって創始された。戦中には軍隊を対象とする巡回文庫なども行われたが、公共図書館自動車文庫が盛んになるのは、自動車輸送が発達した第二次世界大戦後のことである。日本では1948年(昭和23)、高知、鹿児島の図書館によって先鞭(せんべん)がつけられ、初期公共図書館の理念である「いつでも、だれでも、どこでも」という資料提供の理念を実現するものとして注目された。各地で行われたサービスのなかには、貸出しのほか映画や紙芝居、農事相談まで含まれていた。

 その後、図書資料の不足や運営の不備によって利用率は低迷したが、1960年代の後半、東京都下の図書館が始めた住民本位のサービスが需要を回復、現在では大半の図書館が巡回を行い、所有のブックモビルは全国で669台(1999)に達している。地域住民の学習意欲を背景に、移動図書館の需要も高まっているが、一方では予算の制約による図書資料の不足も指摘されている。

紀田順一郎

『日本図書館協会公共図書館部会編・刊『全国移動図書館研究大会報告』(1956)』『東京都立立川図書館編・刊『移動図書館の運営に関する若干の問題』(1961)』『千葉県立中央図書館編・刊『千葉県移動図書館ひかり二十年史』(1970)』『群馬県立図書館編・刊『移動図書館20年のあゆみ』(1971)』『鈴木四郎他著『ブック・モビルと貸出文庫』(1972・日本図書館協会)』『矢本清編『移動図書館30年史年表』(1979・徳島県立図書館)』『足立区立中央図書館編・刊『移動図書館団体貸出のあゆみ』(1980)』『栃木県立図書館編・刊『あけぼの 栃木県移動図書館三十年記念誌』(1981)』『全国図書館埼玉大会実行委員会編・刊『埼玉の移動図書館』(1981)』『全国移動図書館研究集会公共図書館部会移動図書館分科会編・刊『移動図書館の現状と課題』(1983)』『むぎぶえ連絡協議会編・刊『みんなの図書館づくりをめざして 桶川市移動図書館「むぎぶえ号」10周年記念号』(1984)』『前川恒雄著『われらの図書館』(1987・筑摩書房)』『前川恒雄著『移動図書館ひまわり号』(1988・筑摩書房)』『日本図書館協会編・刊『図書館ハンドブック』第5版(1990)』『愛知県教育委員会文化財課編・刊『40年のあゆみ 愛知県移動図書館記録書』(1991)』『兵庫県図書館協会編・刊『兵庫県の移動図書館と協力事業』(1993)』『那覇市立図書館編・刊『那覇市立移動図書館「青空号」20年の軌跡 真理がわれらを自由にする』(1997)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「移動図書館」の意味・わかりやすい解説

移動図書館 (いどうとしょかん)

図書,レコードなどの図書館資料を積載し,一定の地域内を定期的に巡回する自動車をいう。書架やカウンターを装置し,貸出しや読書相談なども行う。自動車文庫,自動車図書館,ブックモビルbookmobileとも呼ばれる。また移動図書館を広く解釈して,遠隔地の学校,施設,団体に一定数の図書をセットにして送付する巡回文庫,貸出文庫を指すところもある。ふつうマイクロバスやトラックなどを改造し,車の内部または両側面に書架を装備,約1000~3000冊の図書を積載する。運転手と別に図書館員(司書)が同乗して,直接利用者に図書館としての専門的なサービスを行う。地域全体へのサービスを行き渡らせるために,本館,分館などのサービス拠点から遠い人々に対しこのサービスが実施される。外国では1万冊以上も積載する大型トレーラーもあり,また船(ブックボートbook boat)やヘリコプター(ブックリフトbook lift)などを使う国もある。

 この図書館活動は巡回文庫traveling libraryが原型で,図書館のない地方へ馬車などにより巡回貸出しを行っていたが,1900年代に入って自動車にかわった。自動車によるものは,アメリカで07年メリーランド州ワシントン郡図書館において,イギリスでは31年マンチェスターが創始といわれている。日本での巡回文庫は1902年秋田県立図書館が最初であるが,自動車を改造し,書架を装置して実施したのは49年千葉県立図書館である。以後図書館の発展に伴って全国的に普及し,95年3月末現在,全国で683台を保有している(うち22台は都道府県立,661台は市区町村立)。最近では,移動図書館の効果が認識され,上記以外の図書館未設置の市町村でも,教育委員会公民館が設置主体となって実施するところが増加している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

図書館情報学用語辞典 第5版 「移動図書館」の解説

移動図書館

公共図書館が図書館を利用しにくい地域の住民に対して,何らかの移動手段を用いて図書館資料を運び,図書館員による図書館サービスを提供する方式.すべての住民が公平に図書館サービスを受けられるようにすることが主目的であるが,住民の図書館への理解を深め,図書館や分館の設置の気運を醸成することも重要とされている.移動手段としては,歴史的には馬車,自転車,リヤカーなどが使われてきたが,現在は特別に改造された自動車の利用が主流である.離島向けに図書館船が使われた事例があり,外国では鉄道やヘリコプターも使用されている.通常,自動車図書館の積載量は2,000~4,000冊であり,2週間に1度程度の頻度で巡回する.日本では第二次大戦直後に自動車図書館が開始され,1965(昭和40)年からの日野市立図書館の活動により普及した.最近は,移動図書館や自動車図書館よりもbookmobileの略称であるBM(ビーエム)が通称となっている.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

百科事典マイペディア 「移動図書館」の意味・わかりやすい解説

移動図書館【いどうとしょかん】

自動車文庫,ブックモビルとも。巡回文庫の一つ。大型自動車の内部を書庫風に仕立て,ある基準の下に選択編成した図書群を積んで図書館未設置の地区などを順次巡回し,人びとの閲覧の便を図る。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android