一度葬られたあと、なんらかの理由で改めて二次的に葬儀がなされることをいう。改葬ともよばれる。葬法が2段階以上に分かれていることが制度的であれば、葬制全体として複葬と普通よばれている。いったん埋められた死体が掘り起こされ、洗骨がなされて、改めて葬儀を行ってこの骨が葬られる手順が複葬の典型である。複葬の分布は、熱帯アメリカ、インドネシア、メラネシア、ニュージーランド、中国南部の中国人や少数民族の一部、ベトナム人、中部インドのムンダ系諸族などに広がっており、アフリカではあまりみられない。日本でも一部で改葬として制度的になっている所もある。一方、二次的な葬儀が制度的なものではなく、個別的で偶発的な改葬の例もある。たとえば、朝鮮や中国では多くの場合、風水信仰に基づいて、子孫の災いが祖先の墓の位置によるものとして、他の場所へ移葬されることがある。移葬の起源については、複葬一般の起源とも関連し、また死生観、他界観の多様からまだつまびらかにされていないが、風水信仰がそうであるように、定住性が一つの前提条件と考えられている。
[髙谷紀夫]
『大林太良著『葬制の起源』(角川選書)』