(読み)しょく(その他表記)jì

普及版 字通 「稷」の読み・字形・画数・意味


15画

[字音] ショク
[字訓] たかきび

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(しよく)。は田神の象。〔説文〕七上に「(たかきび)なり。五の長なり」とみえ、今の高粱(こうりやん)をいう。次条に「は稷なり」と互訓している。字条五下に「稼を治むること、としてむなり」とするが、〔左伝、昭二十九年〕に「稷は田正なり」、〔周礼、地官、大司徒〕「稷」の注に「后土び田正のなり」とあって、それが初義。周の始祖后稷(こうしよく)は農業神であり、地の神である社と合わせて社稷といい、国家の意に用いる。

[訓義]
1. 田神、農穀の神。
2. たかきび。

[古辞書の訓]
和名抄稷米 比乃毛知(きびのもち)〔名義抄〕稷 アハキビ・アキヲサメ・トクス/稷米 キビノモチ 〔字鏡〕稷 アハ・アキヲサメ・ヒエ

[語系]
稷・tzikは同声。は田神の象。そのによって与えられた穀の意であろう。周の后稷に農祖としての伝承があり、〔書、尭典〕にも、「爾(なんぢ)后稷、時(こ)の百を播(ま)け」という文がある。

[熟語]
稷下稷官・稷稷祠稷食稷黍稷稷稷神・稷正稷雪・稷・稷米稷門
[下接語]
馨稷・郊稷・祭稷・粢稷・社稷・黍稷・天稷・稲稷・農稷・粱稷

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「稷」の意味・わかりやすい解説

稷 (しょく)

中国で,五穀の一つの粟(あわ)の別称。稷が現在の何にあたるかについては3説ある。《爾雅(じが)》や《礼記(らいき)》など経書の注釈では,唐までは粟とされてきた。ところが唐代の本草家(薬草学者)が穄(うるきび)という説をたてそれが流布し,さらに清代に程瑶田が高粱(コーリヤン)説を主張した。しかし,五穀の筆頭におかれ,太古農事をつかさどった官,ひいて周の始祖の別名となった后稷や,社稷として土地神にならぶ穀物神とされる稷の用法からも,粟とするのが妥当であろう。
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動植物名よみかた辞典 普及版 「稷」の解説

稷 (アワ)

学名Setaria italica
植物イネ科一年草,園芸植物

稷 (キビ・キミ)

学名:Panicum miliaceum
植物。イネ科の一年草

稷 (ウルシキビ)

植物。粳の黍。ウルチキビの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【社稷】より

…中国において,とは本来原始集落の中心となる標象をいい(やがては土地神ともなる),そこでは播種や収穫の農耕儀礼,集落の集会などが行われ,その標象には樹木,封土,石などが用いられた。稷は穀神corn spiritで,社の祭礼における豊穣祈願の対象とされた。周代には社稷の祭礼は宗廟における祖先の祭礼と並ぶ重要な国家祭祀とされ,穀神の稷は周王朝の祖先とされるに至り,社稷が国家自体をも意味するようになった。…

【社稷壇】より

…中国において社(土地の神)と稷(穀物の神)をまつる方形の壇。四角は大地の象徴。…

※「稷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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