空気ばね(読み)くうきばね(その他表記)air spring

改訂新版 世界大百科事典 「空気ばね」の意味・わかりやすい解説

空気ばね (くうきばね)
air spring

空気の圧縮性を利用したばね。鉄道車両やバスの支持ばねとして広く使われている。圧縮空気伸縮自在容器に入れたもので,容器としてちょうちん形のベローズを用いるベローズ形と,円筒形の内筒とふたに相当する外筒の間を,ゴム膜(ダイヤフラムという)でつないだダイヤフラム形とに大別される。図に示したのは鉄道車両用のダイヤフラム形空気ばねで,薄いゴム膜で作られたダイヤフラムと,外筒および内筒で構成される空気タンクとからなり,その間にオリフィス(絞孔)を設けて振動減衰力をもたせる。ダイヤフラムが上下,左右に変形し振動を吸収する。空気タンクは,外部に設けた空気圧縮機と空気管で結ばれており,3~5気圧の空気が送り込まれている。乗客乗り降りにより車体の重量が変化し,ダイヤフラムのたわみが変わると,自動高さ調整弁が働き,空気タンクの空気圧を自動調整して,たわみを所定の位置に戻す。したがって車両の床の高さは乗客の多少にかかわらず一定に保たれる。ベローズ形空気ばねもその動作原理は同じである。空気ばねの同類には,このほか,空気のかわりに高圧ガス多く窒素ガス)を封入したガススプリングや,高圧ガスと液体とを組み合わせたハイドロニューマチックサスペンションと呼ばれる支持ばねがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「空気ばね」の意味・わかりやすい解説

空気ばね
くうきばね

ゴムタイヤ状の容器の中に圧力空気を入れ、ゴムと空気の弾性により、ばね作用を得るもの。大型の観光バスや列車の客車に使用されている。鉄道車両では、主として旅客車の乗り心地をよくする目的で台車の枕(まくら)ばねとして使用され、ベローズ形とダイヤフラム形がある。金属性のコイルばね板ばねでは、乗客の多少によってばねが伸縮し、車体の高さが変化するので、車両連結上あまり柔らかいばねは使えない。しかし空気ばねでは、乗客の多少により、ベローズbellows(小田原提灯(ちょうちん)状のゴム容器)内の空気圧を変え、ばねの高さを一定に保持することができるので、金属性のばねに比べて非常に柔らかくすることができ、良好な乗り心地が得られる。一般に空気ばねは補助空気室とあわせ、その間の適当な絞りにより振動を減らしている。また空気ばねのばね定数は荷重に比例して変化するので、車両の振動数は乗客の多少であまり変化しない。機関車では空気圧を制御し、軸重を変える目的で空気ばねを利用している。

[渡辺正久]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「空気ばね」の意味・わかりやすい解説

空気ばね
くうきばね
air spring; pneumatic spring

空気の弾性を応用したばねで,1952年頃アメリカでバスに実用化したのに始り,各種車両に使用されている。金属製ばねに比べて,比較的自由にばねの特性が選べ,低いばね定数が得られること,また高周波の振動,騒音を遮断できることなど,数々の長所をもつ。基本構造は,自動車を例にとれば,伸縮部 (ばね本体にあたる) ,補助空気タンク,自動高さ制御弁から成る。種々の形式,構造があるが,現在ではゴム膜式が主流を占め,その形式には振幅 (変位) に伴ってゴム膜が食込んで反転するダイヤフラム型と,反転しないべローズ型とがある。前者は小型化が容易 (乗用車向き) であるが,耐久性が若干劣る。

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百科事典マイペディア 「空気ばね」の意味・わかりやすい解説

空気ばね【くうきばね】

空気の弾性を利用したばね。鉄道車両・自動車の支持ばねに使用される。ベローズと呼ぶゴム製のちょうちん形容器内に圧縮空気を入れたベローズ形と,円筒形の内筒と外筒(ふたに相当)の間をダイヤフラムでつないだダイヤフラム形がある。空気のかわりに高圧ガスや,高圧ガスと液体の組合せを用いるものも開発されている。
→関連項目サスペンション(自動車)

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世界大百科事典(旧版)内の空気ばねの言及

【ばね】より


[用途]
 ばねの用途は振動や衝撃を吸収してやわらげる緩衝用,復元力を動力源とする動力発生用や位置の復帰用,物をはさみ締めつける締結用などに大別される。(1)緩衝用 自動車,鉄道車両には,車輪の振動を車体に伝えるのを防ぐためにコイルばね,重ね板ばね,空気ばねなどがダンパーとともに使われている。自転車のリムとスポークは,緩衝用のばねとしての働きもしている。…

※「空気ばね」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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