中国,後漢時代の仏教伝来期の伝説上のインド僧。インド仏教の中国伝来を権威づけるものとして後漢の明帝永平8年(65)の感夢求法説話は,後漢末年のころにはすでに《四十二章経序》,牟子《理惑論》などにおいて伝えられはじめられていた。南朝梁の僧祐《出三蔵記集》巻二において〈張騫,秦景が竺摩騰に遇って四十二章経を訳写した〉という話が付伝され,つづいて梁の宝唱《名僧伝》巻一と慧皎《高僧伝》巻一,訳経篇の冒頭において(迦)摂摩騰と竺法蘭の両伝が立てられ,彼らが《四十二章経》などを翻訳したことが付加されるにいたった。《高僧伝》によれば,竺法蘭は,中天竺の人,経論数万章を暗誦すると自称した。明帝の使者蔡愔の依頼によって67年に(迦)摂摩騰とともに洛陽に来て,《十住断経経》《四十二章》など5部の経典を翻訳した,という。けだし〈初めて東土を化した伝法宣教〉者として説話化された訳経者の典型である。
執筆者:荒牧 典俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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