改訂新版 世界大百科事典 「算学啓蒙」の意味・わかりやすい解説
算学啓蒙 (さんがくけいもう)
Suàn xué qǐ méng
1300年ごろの元代に活躍した数学者朱世傑の著述。3巻20門に分け259問を含み,趙城の序(1299・大徳3)を付して刊行された。特にその第3巻に,13世紀前半に華北で考案された中国流代数学〈天元術〉をわかりやすく解説した書物として知られる。李朝時代の朝鮮で重刊され,それが豊臣秀吉の文禄・慶長の役のころ日本に伝わり,和算の発展に大きな影響を与えた。そのころ伝わった朝鮮重刊本が旧東京教育大学に所蔵されていた。江戸時代にいくつかの注釈書が書かれたが,建部賢弘(たけべかたひろ)の《算学啓蒙諺解大成》7巻(1690)が有名である。一方,中国では明代に数学が衰微し,〈天元術〉は忘れられ,《算学啓蒙》も見失われた。19世紀にはいって羅士琳が朝鮮重刊本を手に入れ,《校正算学啓蒙》3巻(1834)を刊行して広く知られるようになった。なお朱世傑には《四元玉鑑》3巻(1303)の著述がある。
執筆者:藪内 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報