六訂版 家庭医学大全科 「糖尿病妊婦」の解説
糖尿病妊婦
(代謝異常で起こる病気)
糖尿病の女性が妊娠・分娩を無事に終了するためには、妊娠する前からの治療が大切です。
胎児の神経系、心臓、手、足などいろいろな臓器は妊娠初期に形成されますが、この時期に母体の血糖値が高いと、先天奇形のある子どもが生まれる可能性が高くなります。子どもの先天奇形を予防するためには、妊娠前に血糖コントロールをよくしておかなければなりません。
また
網膜症が悪化する可能性がある時には、眼科的な治療も考慮し、安定してから妊娠を考えます。腎症を合併している場合には、
妊娠糖尿病の項で述べたように、妊娠中の血糖コントロールが悪い場合には母体や胎児にさまざまな合併症が起きます(表8)。これらの合併症を予防するためには、妊娠中は厳格に血糖コントロールを行うことが大切です。
妊娠時の薬物療法にはインスリンを用います。妊娠を希望している糖尿病の女性が
妊娠中は、妊娠時期によってインスリンの需要量は変化します。血糖自己測定の結果をもとに、血糖値が上昇しやすくなる妊娠中期以降には的確にインスリンを増やし、分娩終了後には減らさなければなりません。食事療法も胎児が順調に育ち、太りすぎによる母体の合併症を防ぐために行います。内科、眼科、産科、新生児科のチーム医療が必要であり、これらの科がそろった専門病院での治療、分娩をすすめます。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報