《紅楼夢研究》批判(読み)こうろうむけんきゅうひはん

改訂新版 世界大百科事典 「《紅楼夢研究》批判」の意味・わかりやすい解説

《紅楼夢研究》批判 (こうろうむけんきゅうひはん)

中国,解放後の知識人の意識変革をめざす大運動の一つ。唯物論思想を,古典紅楼夢研究にどう具体的に適用するか,学術権威を無名の青年が批判し,それを毛沢東が1954年10月16日手紙を書いて支持する形で繰り広げた運動。批判論文を採用するかどうかの手続問題から,馮雪峰(ふうせつぽう)らの《文芸報》編集部自己批判をも引きおこした。胡適の《紅楼夢考証》(新紅学)の系統を継ぐ兪平伯(ゆへいはく)は《紅楼夢研究》《紅楼夢簡論》などで,《紅楼夢》を色即是空を表す観念小説で,作者曹雪芹の嘆きの自伝とみなした。山東大学を卒業したばかりの李希凡藍翎(らんれい)は,〈《紅楼夢簡論》およびその他について〉を書き,兪平伯はリアリズムの批判原則を離れ,明確な階級的観点を離れていると批判し,《紅楼夢》を当時の封建社会に対する反抗の書とし文学の分析に“人民性”を導入した。この学術論争は,兪平伯の自己批判(《文芸報》1955年5期)に一応の決着をみるが,毛沢東の手紙を受けて《人民日報》は鐘洛の〈《紅楼夢》研究の誤れる観点に対する批判を重視しなければならない〉を発表(1954年10月23日)し,胡適思想批判へと知識人の意識変革運動を拡大した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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