〈封建制度〉が一つの制度を指す概念であるのに反して,〈封建社会〉は封建制度がみられる社会を一つの社会類型として全体的・統一的に把握した概念である。したがって,封建制度をどう理解するかによって,どの時代,どの社会を封建社会とみるかも変わってきうる。封建社会についての最も代表的な研究はM.ブロックの《封建社会La Société féodale》2巻(1939,40)であるが,ここでは13世紀までの西ヨーロッパ中世社会が取り扱われ,レーン制や農奴制のほかに,イデオロギーのあり方,教会や修道院の位置づけ,法制や裁判のあり方,都市の問題,生活様式などが総合的に分析されている。封建社会の基本的な特色としては,次の諸点をあげうるであろう。(1)人的な従属関係の網の目が社会のすみずみまで張りめぐらされ,このような人の人に対する身分的支配関係を通じて,国王を頂点とする大規模な人的階層制が形成され,この階層制の上層には軍事力を独占した騎士階級が位置し,最下層には領主の家産制的支配に服する農民が直接生産者の階層として存在する。(2)この人的階層制に対応して,土地に対する権利も上級・下級のいく層にもわたって分割され,土地のいわば物権的な階層制が形成されている。(3)権力も著しく分裂し,人的階層制のそれぞれの層に属する人びとによって分有されており,彼らはこの権力を自己の名において,自己の利益のために行使している。
→封建国家 →封建制度
執筆者:世良 晃志郎
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…この階級関係は土地を媒介とし,家父長的な土地所有者と奴隷の関係であるが,この階級関係が原始的共同体を崩壊せしめて古代的階級社会を形成することになる。続く封建社会においては,財産形態は大土地所有者たる封建領主とその支配下にある農民・農奴という階級関係として現れる。ここでは農民はある程度の土地所有は認められるものの,例えば処分権は剝奪されるといった共同体的拘束下に置かれ,また共同体的土地所有も解体されてはいない。…
…この見方は第2次大戦後,封建制を農奴に対する領主の支配(農奴制,領主制)に基礎をおく社会とする石母田正らのマルクス主義史家に継承された。やがてそのなかから江戸時代をも農奴制に基づく社会とみなすことによって,中世・近世をあわせて封建社会=中世社会とし,中世をその前期,近世を後期とに区分しつつも全体として領主制の形成から崩壊までの過程を考えようとする永原慶二らの見解が生まれた。一方,中世と近世との差異を本質的とみて,中世を家父長的奴隷制社会,近世を農奴制社会とする安良城(あらき)盛昭の説も現れた。…
…幕藩体制のもとで,個別領有の側面をもつ藩が実施した政治的改革。幕藩体制社会を,太閤検地の施行を史的前提として,単婚小家族の小百姓を土地に緊縛し,これを身分制的に支配する封建社会と規定するとき,そこでの農政の基調は,小百姓の自立あるいは分裂による創出であり,維持であった。そして,そこでは領主の封建的大土地所有と小百姓の零細錯圃の占有とが対峙する関係にたっていた。…
※「封建社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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