経済現象は、政治的、法律的、技術的、心理的などさまざまな人間生活の諸側面の絡み合いから成り立っている。そのなかで純粋に経済的な現象だけを抽出して、その経済現象の自律性、自己完結性を説明することが経済理論の目的であり、かつそれによって経済学が他の社会科学から独立した一個の科学たりうるという立場にたった経済学体系をいう。この考え方はワルラスに始まるが、彼は交換から出発して、すべての経済要因の相互依存関係が均衡を保っている体系として経済を描いた。これが一般均衡理論であった。ついでシュンペーターはワルラスから出発して、まず交換が純粋な経済現象であるとし、それが収斂(しゅうれん)して均衡を保つ体系を静態、静態のなかから純粋に経済的でありながらそれを破壊する要因としての革新が起こり、それが巻き起こす創造的破壊の世界を動態とした。この両者は日本の経済学にも強い影響を与えている。
[一杉哲也]
…1870年にスイスのローザンヌ大学教授となり,92年まで在職。その経済学体系は,交換価値と交換の理論,ないし抽象的に考えられた社会的富の理論である純粋経済学,社会的富の経済的生産の理論ないし分業を基礎とする産業組織の理論である応用経済学,そして所有権の理論であり社会的富の分配の科学である社会経済学からなり,それぞれその著作《純粋経済学要論》(1874‐77),《応用経済学研究》(1898),《社会経済学研究》(1896)に対応する。しかし,経済学史上最も重要なのはその純粋経済学であり,経済の諸部門間の相互依存関係を強調した一般均衡理論を展開し,現代のミクロ経済学の基礎をきずいた。…
※「純粋経済学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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