日本大百科全書(ニッポニカ) 「組積構造」の意味・わかりやすい解説
組積構造
そせきこうぞう
小単位のおもに直方体状の材料を組み合わせ積み重ねて、建物の主体部分をつくる構造。石、れんが、コンクリートブロックなどをモルタルで接着し、目地(めじ)を切って積み上げて、おもに壁体をつくる壁式構造の一種である。床や屋根は他の構造法による場合が多い( )。
組積構造は重量が大きいが、この自重を含む鉛直荷重は、壁体のもつ高い圧縮強度を巧みに利用した組積法で支えられる。他方、地震のような水平方向の外力に対する壁体の抵抗力は小さく、接合目地が弱点になることが多い。一般に、耐久性、耐火性、保温性、壁としての遮断性に優れている。
このため地震の心配がない国々では、石造がもっとも古くから用いられ、いまでもれんが造の建物は少なくない。さまざまな組積法がくふうされた結果、優美なアーチ、ドーム、ボールトなどが生み出されており、現存する歴史的に著名な建造物の大半は組積構造である。
日本には、明治初期にれんが造が伝わったが、西欧直輸入の構法をとっていた当時の建物は、濃尾(のうび)地震(1891)や関東大震災(1923)で大きな被害を出したため、その後、純粋の組積構造はまれになり、鉄筋で補強する構法が一般的になった。現在、わが国の組積構造は普通、鉄筋を使わず、これを用いる補強コンクリートブロック造などは別の構造法に分類されている。なお石材には、「だぼ」や「かすがい」のような金物を補強に用いることが多い( )。
この構造の詳細は日本建築学会の組積造設計規準で規定され、小規模の二階建て程度の建物あるいは建築物の一部に使われている。特殊な例として、ブロック塀や石塀があり、宮城県沖地震(1978)では、その倒壊によって多数の死傷者を出し注目された。
[鈴木 有]
『日本建築学会編『建築学便覧Ⅱ 構造』(1977・丸善)』▽『日本建築学会編著『特殊コンクリート構造関係設計規準・同解説』(1983・丸善)』▽『『建築学大辞典』(1976・彰国社)』