日本大百科全書(ニッポニカ) 「結婚退職制」の意味・わかりやすい解説
結婚退職制
けっこんたいしょくせい
労働者の結婚という理由をもとに、当該労働者の意思、能力、勤務条件などにかかわりなく、一律に雇用者としての地位をなくす制度。一般に女子労働者を対象にする。出産という理由をもとに雇用者としての地位を喪失する制度とあわせて結婚・出産退職制ともいう。通常の場合に比べてとくに低い定年年齢を定め、当該の年齢に達した場合に、当該労働者の意思、能力、勤務条件などにかかわりなく、一律かつ無条件に退職させる若年定年制(早期定年制ともいう)と共通の問題をもっている。企業は、この制度によって労働力の年齢構成を自動的に調整することができる。このように勤続年数についての差別が性別だけにかかわり、それ以外の合理的な理由をもたない場合には、差別的条件について定めた労働協約、就業規則、労働契約中の当該部分は、憲法に定める平等原理を基調とする公序良俗に反することから、無効であるとされる。
[三富紀敬]