金属,セラミックスなどの固体材料は,通常数多くの結晶の粒の集合体である。隣接する結晶粒の相が同じときには,両者の界面を結晶粒界(粒界,結晶境界ともいう)といい,両者の相が異なるときには異相界面または異相境界という。異相界面の構造,性質などは,多くの点で結晶粒界のそれに類似している。隣接する二つの結晶粒の間に,別の相の薄い層が挟まれている場合もある。構造的には,結晶粒界は原子配列の乱れた領域である。両側の結晶格子の向きの違い(方位差)が小さいときには,この乱れは格子中の転位の周期的配列と等しい。方位差が大きいときには,結晶粒の間の対応のよい領域と悪い領域の周期的配列から成り立っていると考えられている。
結晶粒界は,そこでの原子配列の乱れに対応して,原子の移動が起こりやすい(粒界拡散),異種の原子が集まりやすい(粒界偏析),別の相が析出しやすい(粒界析出)などという性質をもっている。耐熱材料として問題となるような高温では,結晶粒界での粘性的すべりや粒界拡散のため,結晶粒径が大きいほど材料の強度は低い。ただし結晶粒が小さすぎると超塑性が生じて強度が低下することがある。一方低温では,一般に結晶粒径が小さいほど,結晶粒界の転位の運動が妨げられるために,材料の強度は高い。粒界偏析や粒界析出が生じると,粒界の強度が低下し材料としてもろくなることがあり,また粒界から腐食の生じる原因ともなる。粒界における異相の層の存在が,セラミックスの靱性(じんせい)不足の原因となっていることが多い。一方,粒界拡散と粒界偏析を利用して,結晶粒界に組成の異なる薄膜を作ることができ,これは低損失高周波フェライトや高誘電率磁器コンデンサーの製造などに応用されている。
→金属組織
執筆者:伊藤 邦夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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