家庭医学館 の解説
けっかくせいかんせつえんかんせつけっかく【結核性関節炎(関節結核) Tuberculous Arthritis】
肺結核など、ほかの結核病巣から結核菌が血管に入り、関節に流れてきておこる関節炎です。
肺結核(「肺結核」)が多かった時代にはよくみられた病気で、脊椎(せきつい)カリエス(「脊椎カリエス(結核性脊椎炎)」)とともに、治りにくい病気の1つでした。
しかし結核は、予防接種の普及、抗生物質の発達、患者さんの入院の徹底、栄養の向上などによって、少なくなってきた病気です。
とくに、子どもがかかることは非常に減少し、最近では中高年に多い病気となっています。
ただし、結核はけっして過去の病気となったわけではありません。現在でも発症が続いており、怖い感染症の1つです。
[症状]
関節の腫(は)れと痛みがおもな症状ですが、化膿性関節炎(かのうせいかんせつえん)(「化膿性関節炎」)と異なり、熱や赤みはあまりなく、激痛もめったにみられません。
安静によって痛みは軽くなり、動くとまた痛みがおこりますが、動けないほど強いものではありません。
そのため、診断も遅れがちになり、だんだんと関節の動きが悪くなっていきます。
[検査と診断]
関節に多量の水がたまる水腫(すいしゅ)型、関節がかたく腫れ、筋肉がやせる肉芽(にくげ)型、関節に膿(うみ)がたまる化膿型という、3つのタイプがあります。
症状とX線撮影で見当はつきますが、確実に診断するには、関節から抜いた関節液の中から結核菌を見つけ出すか、あるいは関節の組織を少しとって、顕微鏡でそれを詳しく調べて(生検(せいけん))結核菌を見つけるか、または、特徴的な結核腫(けっかくしゅ)という病巣を見つけなければなりません。
[治療]
入院して、ギプスで固定したり、牽引(けんいん)で関節の安静を確保します。
できるだけ早く、関節鏡を用いた関節内の洗浄と肉芽の切除を行ない、チューブを挿入して、関節内の洗浄を続けます。それと同時に、抗結核薬を使用します。
しかし、発見が遅れて病状が進行してしまうと、関節は破壊されてしまいます。こうした場合には、炎症を治すために、関節を固める手術(関節固定術(「関節手術のいろいろ」))が必要となってきます。
抗結核薬は、炎症が治まっても引き続き、数か月は服用しなければなりません。
また、関節結核でも、結核予防法に定められた届け出が必要です。